研究課題/領域番号 |
19K18636
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研究機関 | 山梨大学 |
研究代表者 |
尾山 恵亮 山梨大学, 大学院総合研究部, 臨床助教 (90833624)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 虚血再灌流障害 / インドシアニングリーン / 卵巣 |
研究実績の概要 |
卵巣の捻転解除後に、卵巣予備能がどの程度残存するのかを予測する方法はこれまで存在せず、手術中の主観的推測や、「全例温存する」という方針に基づいて治療法が選択されてきた。本研究では、捻転卵巣の血流が手術中にICGアンギオグラフィーによる定量的評価が可能であること、さらに予後予測に有用であることと示すことができた。以下、詳細に述べる。 ICGアンギオグラフィーの卵巣血流のパラメータの中では、阻血解除前の「最大血流」が、卵巣の予後に対し、非常に高い感度、特異度を呈した。ヒトの結腸直腸手術においても、最大血流が、縫合不全の最も優れた指標であり、この結果は本研究と一致している。すなわち、これはヒトの卵巣についても同様に重要なパラメータとなることが推測される。また、皮弁形成後に切除を要する組織の血流のカットオフ値は、正常組織の血流に対して25~60%とされている。本研究での相対血流のカットオフ値は、それよりもずっと低い11%であった。以上より、卵巣は腸管や皮膚とは異なり、少ない血流で、長時間の虚血にも耐えうると言え、この点は非常に興味深い結果であった。 また、阻血解除の前後での血流変化の割合である、「再灌流の割合」が、高い感度、特異度を示した。虚血再灌流障害自体は多くの主要臓器と同様に、既に卵巣でも認められており、本結果はそれに矛盾しない。また、Ingecらは、ラットの卵巣を3時間虚血した後、ゆっくりとクリップの開閉を繰り返して捻転解除をすることで組織障害を軽減することができたと述べている。本研究のように、ICGアンギオグラフィーをリアルタイムにグラフ化し、再灌流の割合がカットオフ値である1.5を超えないように虚血解除をコントロールすればIngecらの方法の再現が可能と考えられる。つまり本結果は予後予測にとどまらず、治療介入にも役立つ可能性がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初の予定通り、インドシアニングリーンが捻転卵巣における、血流の定量的評価が可能であること、また、予後を予測するのに有用であると証明することができた。そして、その結果をまとめ論文投稿し、高インパクトファクターの英文誌に掲載された。
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今後の研究の推進方策 |
2022年度は、当初の予定通りに学会発表を行う。さらに、卵巣の虚血再灌流障害についての研究を発展させるべく、今後の実験計画を企画する。
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次年度使用額が生じた理由 |
実験等が計画通り進んだため、若干多めに見込んでいた使用額を使わずに済んだ。 使用計画としては、今後、本研究で触れた虚血再灌流障害に関して生理学的な分析をしたいと考えており、その事前実験に用いる。
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