研究課題/領域番号 |
19K18637
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
牛田 貴文 名古屋大学, 医学部附属病院, 助教 (90805152)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 妊娠高血圧腎症 / DOHaD / 早産児 / 脳障害 |
研究実績の概要 |
(1)母体炎症と児の将来の疾患発症に関する研究については、前年度には妊娠高血圧腎症モデルラットを作成し、生後24週における循環器・代謝機能評価を行った。今年度は生後4週・24週で組織を回収し、ヒストン修飾、DNAメチル化解析、心臓の組織学的検証を行った。オスでは肝臓、メスでは心臓、肝臓、腎臓、脾臓におけるヒストン修飾を一部認めたが、DNAメチル化に変化は認めなかった。心筋における有意な所見は認めなかった。 (2)妊娠高血圧腎症による児の脳神経への影響に関する研究については、前年度に妊娠高血圧症候群を発症した母体から生まれた早産児20例、それ以外の早産児74例を対象として、在胎修正40週の頭部MRI画像を用いて、Voxcel Based Morphometry(VBM)により脳全体の容積や局所的な容積変化やkidokoro scoreを用いた脳障害スコアを評価した。本研究結果を論文化し、現在投稿中である。また今年度はMR spectroscopyという脳内の代謝物を非侵襲的に測定する手法を用いて、妊娠高血圧症候群を発症した母体から生まれた早産児の脳障害のメカニズムを探る研究を行った。妊娠高血圧症候群からの早産児27例、それ以外の早産児77例を対象として、左右の前頭葉、側頭葉、後頭葉、視床、基底核の計10カ所におけるNAA/Cho、NAA/Cr、Cho/Crを測定した。測定値をMRI撮影週数、性別で補正後も、妊娠高血圧症候群の母体から生まれた児は、両側視床のみにNAA/CrおよびNAA/Choの有意な上昇を認めた。既報からは視床におけるNAA/Choの低下が1.5歳の発達指数の低下に関連があるとの報告があり、今回NAA/Choの上昇は、妊娠高血圧症候群が児の脳を保護的に作用する可能性を示唆していることが明らかになった。今後は解析結果を検証した後、論文化に向けて準備を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
(1)母体炎症と児の将来の疾患発症に関する研究に関しては、実験データがおおむね揃ってきた段階である。(2)妊娠高血圧症候群による児の脳神経への影響に関する研究に関しては、VBMに関してはデータがまとまり、現在論文を投稿中である。またMR spectroscopyに関しても、現在データがまとまったため、論文を準備し、2021年度中に投稿予定である。上記状況により、進行具合としてはおおむね順調と考える。
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今後の研究の推進方策 |
(1)母体炎症と児の将来の疾患発症に関する研究 各種循環・代謝機能評価を終了し、組織を回収。今後ヒストン修飾、DNAメチル化解析などを予定する。 (2)妊娠高血圧腎症による児の脳神経への影響に関する研究 VBMに関しては、論文を作成し、現在投稿中である。MR spectroscopyに関しては、現在データがまとまったため、論文を準備し、2021年度中に投稿予定。
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