研究課題/領域番号 |
19K18642
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
三宅 達也 大阪大学, 医学系研究科, 助教 (00814766)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 慢性子宮内膜炎 / テロサイト / Connexin43 / 反復着床不全 |
研究実績の概要 |
妊娠成立には子宮の着床環境が非常に重要な因子であり、着床障害の一因として慢性子宮内膜炎の関与が近年注目されているが、その詳細なメカニズムは未だ明らかでない。我々は平滑筋収縮、免疫調節や子宮内膜脱落膜化に重要は役割を果たすテロサイトに着目した。慢性子宮内膜炎と子宮テロサイトの関与を検討した報告は未だない。本研究では、慢性子宮内膜炎における子宮テロサイトの発現・機能について検索し、今後の生殖医療への応用を目的とする。本研究では慢性子宮内膜炎モデルを新規作製し、子宮内膜炎が子宮内膜および子宮筋層に存在するテロサイトに及ぼす影響を検討するため、今年度は慢性子宮内膜炎モデルマウスの作成を行った。 9週齢のC57BL/6J系マウスおよびC3H/HeNマウスに対し、UMP-1 (Ureaplasmaの主要なリポ蛋白multiple banded antigen(MBA)のN末端22アミノ酸残基をジアシル化したリポペプチド)もしくはE.coli由来LPS(リポ多糖類)を投与した。投与方法として子宮腔内投与もしくは腹腔内投与を行い、HE染色免疫染色を用いて子宮内膜間質に存在するCD138陽性細胞(形質細胞)数を評価した。子宮内膜に存在する形質細胞数はマウス系統によって異なり、C3H/HeN系マウスでは非投与群でも多数存在し、今回のモデルには適さないことがわかった。C57BL/6J系マウスに対するUMP-1子宮内投与によりCD138陽性細胞数の増加を認め、LPS子宮内投与でも投与量依存性に増加を認めた。今回作成したモデルを用いて、慢性子宮内膜炎が子宮筋層を含む子宮に存在するテロサイトに及ぼす影響に関してさらに検討する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
マウス系統により子宮内膜に存在する形質細胞数が異なるため、複数のマウス系統で検討を行い、初年度に予定していた、慢性子宮内膜炎モデルマウスの作成することができた。
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今後の研究の推進方策 |
今後さらにこのモデルマウスを用いて、子宮テロサイトおよびその周囲の免疫細胞(T細胞、脂肪細胞、NK細胞など)の局在やその関係性を評価する。 それと並行して、慢性子宮内膜炎症例におけるヒト子宮テロサイトの発現比較を行う。臨床の場において不妊治療患者の子宮筋層組織を得ることは侵襲的であり困難であるため、子宮内膜炎モデルマウスでの検討を行うこととする。さらに子宮内膜におけるConnexin43、血管増生関連遺伝子(VEGFなど)および着床関連遺伝子(STAT-3,LIF, IL-6など)の発現を比較検討し、慢性子宮内膜炎が着床環境に与える影響を評価する。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初の予定より学会参加のための旅費、人件費が予定より少なくなり、また消耗品や備品なども現時点では自施設のものを使用できているため、次年度使用額が生じた。翌年度、引き続き試薬の購入や、学会参加(国際学会を含め)が増えることが予想され、その費用として使用する予定である。
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