研究課題/領域番号 |
19K18644
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
古宇 家正 広島大学, 病院(医), 講師 (10794779)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 卵巣粘液性癌 / CDX2 / Reg IV / 5-FU |
研究実績の概要 |
卵巣粘液性癌において、薬剤耐性に関する CDX2 の標的遺伝子として MDR1 に加えて Reg IV の発現調節を確認し、関連する EGFR/Akt/AP-1 シグナリング経路の活性とアポトーシスの抑制を解析する。新規レジメンとして、5-フルオロウラシル(5-FU)の有効性と抗 EGFR 抗体の効果を確認し、CDX2 をバイオマーカーとした個別化治療の確立を目的とする。 まず臨床検体を使用し、免疫組織化学染色法によって、卵巣粘液性癌の高分化型と中分化型で CDX2 と Reg IV がともに発現していることを確認した。次に卵巣粘液性腺癌細胞株を使用し、OMC-1 細胞ではRNA干渉による発現の抑制を行い、OMC-3 細胞では CDX2 の遺伝子導入 (OMC-3/PGS-CDX2 細胞) によって強制発現させた。卵巣粘液性腺癌の分化型による CDX2 と Reg IV の発現に相関性を認め、CDX2 を介して REG4 の発現を調節している可能性がある。 Reg IV が関連する EGFR/Akt/AP-1 シグナリング経路の活性について WB法で確認した。OMC-3/PGS-CDX2 細胞では EGFR のリン酸化の亢進を認めなかったが、Akt は有意にリン酸化が亢進し、DPD の発現が増強していた。DPD の発現による 5-FU の奏効率の低下が報告されているが、MTS assay の検討ではOMC-3/PGS-CDX2 細胞で 5-FU の感受性が有意に高かった。アポトーシスの抑制に関連している Bcl-2 の発現に差を認めなかったが、Apoptosis assay を行ったところ、CDX2 遺伝子導入株でアポトーシスの亢進を認めた。このアポトーシスの亢進によって 5-FU の感受性が高かった可能性が考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
卵巣粘液性癌において、薬剤耐性に関する CDX2 の標的遺伝子として MDR1 に加えて Reg IV の発現調節を確認し、関連する EGFR/Akt/AP-1 シグナリング経路の活性とアポトーシスの抑制を解析する。新規レジメンとして、5-フルオロウラシル(5-FU)の有効性と抗 EGFR 抗体の効果を確認し、CDX2 をバイオマーカーとした個別化治療の確立を目的とする。 現在のところ、薬剤耐性に関する CDX2 の標的遺伝子として MDR1 に加えて Reg IV の発現調節を確認し、関連する EGFR/Akt/AP-1 シグナリング経路の活性とアポトーシスの抑制を解析した。新規レジメンとして、5-フルオロウラシル(5-FU)の有効性も確認した。 以上から、おおむね順調の進展している。
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今後の研究の推進方策 |
CDX2 遺伝子導入株でアポトーシスの亢進を認め、このアポトーシスの亢進によって 5-FU の感受性が高かったことを確認したが、Reg IV が関連する EGFR/Akt/AP-1 シグナリング経路の活性についてはCDX2 によって制御される Reg IV の発現量の変化が少ないことや、CDX2 の発現によって誘導される別の経路が関連している可能性が考えられる。CDX2 の発現を認める卵巣粘液性癌おけるアポトーシスの亢進と CDX2 の発現の関連に関しては、CDX2 の標的遺伝子の網羅的遺伝子解析実験を行うことで探索していく。
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次年度使用額が生じた理由 |
臨床検体を使用した免疫組織化学染色法による実験、卵巣粘液性腺癌細胞株を使用した遺伝子導入実験やRNA干渉による実験は、既存の実験器具や薬品・消耗品を使用することで使用額を抑えることができた。また、同時に行う予定であった CDX2 の標的遺伝子の網羅的遺伝子解析実験を行えていないこともあり、次年度使用額が生じたと考える。 次年度に、本年度に行う予定であった CDX2 の標的遺伝子の網羅的遺伝子解析実験に使用する予定である。
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