卵巣粘液性癌において、薬剤耐性に関する CDX2 の標的遺伝子として MDR1 に加えて Reg IV の発現調節を確認し、関連する EGFR/Akt/AP-1 シグナリング経路の活性とアポトーシスの抑制を解析する。新規レジメンとして、5-フルオロウラシル(5-FU)の有効性と抗 EGFR 抗体の効果を確認し、CDX2 をバイオマーカーとした個別化治療の確立を目的とする。 まず臨床検体を使用し、免疫組織化学染色法によって、卵巣粘液性癌の高分化型と中分化型で CDX2 と Reg IV がともに発現していることを確認した。次に卵巣粘液性腺癌細胞株を使用し、OMC-1 細胞ではRNA干渉による発現の抑制を行い、OMC-3 細胞では CDX2 の遺伝子導入 (OMC-3/PGS-CDX2 細胞) によって強制発現させた。卵巣粘液性腺癌の分化型による CDX2 と Reg IV の発現に相関性を認め、CDX2 を介して REG4 の発現を調節している可能性が示唆された。 Reg IV が関連する EGFR/Akt/AP-1 シグナリング経路の活性について WB法で確認した。OMC-3/PGS-CDX2 細胞では EGFR のリン酸化の亢進を認めなかったが、Akt は有意にリン酸化が亢進し、DPD の発現が増強していた。DPD の発現による 5-FU の奏効率の低下が報告されているが、MTS assay の検討ではOMC-3/PGS-CDX2 細胞で 5-FU の感受性が有意に高かった。アポトーシスの抑制に関連している Bcl-2 の発現に差を認めなかったが、Apoptosis assay を行ったところ、CDX2 遺伝子導入株でアポトーシスの亢進を認めた。このアポトーシスの亢進によって 5-FU の感受性が高かった可能性が考えられた。
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