研究実績の概要 |
妊娠中の母体免疫は厳密に制御されており、胎児は母体内で成長し出産に至ることができる。しかし何らかの理由で母体や胎盤で免疫機構が過剰に活性化すると、流産となる。これまでの研究により、補体第二経路活性化因子が流産の誘因となることを明らかにしている(Takeshita et al., 2014)。本研究では、補体第二経路抑制機能を持ち、さらに胎盤での遺伝子発現が高いことが知られているC1q/TNF-related protein 6(CTRP6; gene symbol C1qtnf6)について、胎盤内における発現分布や機能を解析し、さらに流産予防薬としての可能性を探ることを目的とした。 (A)胎盤迷路部におけるCTRP6の有無が胎盤環境や胎児発育に与える影響を明らかにするため、C1qtnf6のヘテロ欠損マウス雌雄を交配し、胎盤および胎児を採取した。昨年度までに、ホモ欠損型の胎児重量は野生型と比較し減少していることを見出した。本年度は、その理由として考えられる種々の因子(VEGF、PlGF、Th1/Th2サイトカイン、GLUTなど)の発現変化をリアルタイムPCRを用いて解析したが、各遺伝型における差異はなかった。また、胎盤内のC1qtnf6発現細胞を明らかにするため、In Situ hybridizationを用のRNAプローブを作製した。 (B)CTRP6流産予防薬としての可能性を探るため、妊娠初期の流産モデルマウスにCTRP6を投与し、流産率および胎児重量を測定した。昨年度までに、自然流産モデルマウスの妊娠4日目および6日目にリコンビナントCTRP6を投与すると、流産率が低下傾向を示し、胎盤・胎児重量が増加することを見出した。本年度は胎盤の組織学的および生化学的解析を行い、投与群ではVEGFのmRNA発現量が増加、らせん動脈の血管径増大・血管壁菲薄化が起こっていることを見出した。
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