研究課題/領域番号 |
19K18650
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研究機関 | 自治医科大学 |
研究代表者 |
高橋 宏典 自治医科大学, 医学部, 教授 (80544303)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 絨毛外栄養膜 / 早産 / microRNA / エクソソーム |
研究実績の概要 |
1.初期胎盤から抽出した絨毛外栄養膜、この細胞株(HTR8/SVneo、HChEpC1b)を用い、WNT3A、WNT5A、WNT10BがCD44を介して、当該細胞の浸潤を促進させていることを報告した(Takahashi H, et al. J Matern Fetal Neonatal Med, in press)。まず、第1三半期の胎盤においてWNT19種類のサブタイプのうちWNT3A、WNT5A、WNT10Bがいずれも発現が強かったことから、この分子に着目して、解析を進めた。絨毛外栄養膜においてもWNT3A、WNT5A、WNT10Bの発現を観察した。続いて、WNT3A、WNT5A、WNT10Bを絨毛外栄養膜に添加したところ、この細胞の浸潤及びCD44発現が増加した。さらに、WNTに対するsiRNAや拮抗薬を用いたところ、絨毛外栄養膜の浸潤やCD44発現は逆に減少した。結果、新たな絨毛膜栄養膜の浸潤を促進させる因子としてWNT3A、WNT5A、WNT10Bが存在することを示し、当該WNTはCD44を介して、浸潤を促進させることが示唆された。 2. 妊娠初期の早産予知因子同定のために、妊娠初期採血を回収し、約800例集積しえた。また約500例は分娩予後が判明し、この中で超早産例も発生しており、もう少し検体数が必要ではあるが、統計学的に許容される検体数がほぼ集積できている。 3.超早産例における胎盤および血液を集積した(5例)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
以下の理由からやや遅れている。 1.サンプル回収が遅れている。同時に超早産発生例が少ないので、これに伴う検体もさらに集積する必要がある。 2.エクソソーム回収方法について予定していたものと異なる方法が推奨されつつあるので、エクソソーム回収方法について予定していた方法で良いのか、新たに推奨される方法で行うのがよいか検討を進める必要が発生した。新たな回収方法が良いと判断した場合は、その方法が非常に煩雑で、自分のエフォートに合わない可能性があるので、解析するマーカーをエクソソーム中の物質ではなく、血清中に存在しているmiRNAや関連蛋白、mRNAに変更する可能性がある。 3.Covid-19対応、物品納入遅延の影響で研究が進められなくなった。
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今後の研究の推進方策 |
1. 超早産、非超早産の胎盤、血液検体をそれぞれ、もう数例ずつ集積し、回収した胎盤、血液それぞれでmiRNAアレイ、mRNAアレイ解析を行い、超早産vs.非超早産の比較を行う(血液においてmRNAアレイを行うかは未定)。 2. 前向きコホート研究:血液検体は約800例集積できたが、引き続き血液検体の集積を行う。この中で、早産例vs.対象例におけるターゲットmiRNA、mRNA、タンパクを測定する。測定する分子については1.で上がってきた分子及び、近年、報告された早産関連分子についても検討を行う(ELISA、real-time PCRによって行う)。 3. 我々が新たに同定したWNT3A, 5A, 10Bについても、血液、胎盤で発現比較を行う。 4. エクソソーム回収方法についての検討:最も適切な方法を再検討し、非常に煩雑な方法によるエクソソーム回収が望ましければ血液からのエクソソーム回収は諦め、血清または血漿からダイレクトにmiRNAを測定する方法に方針転換を考慮する。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度は症例集積が主になってしまったので、網羅的検討等が行えなかったため、余剰金が生じている。検体数が集積できるので網羅的検討等で実験に必要な物品の購入に使用する予定である。
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