研究課題/領域番号 |
19K18650
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研究機関 | 自治医科大学 |
研究代表者 |
高橋 宏典 自治医科大学, 医学部, 教授 (80544303)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 絨毛外栄養膜 / 妊娠高血圧症候群 / 妊娠糖尿病 / 早産 / サイトカイン / グロースファクター / バイオマーカー |
研究実績の概要 |
妊娠初期における妊婦の血液検体を用い、以下の知見を得た。 1.後に妊娠糖尿病を発症した5症例と正常妊娠経過(コントロール)5症例の患者血清を用い、サイトカインアレイ(60種類)を施行した。結果、両群間に発現差(2倍以上)のあるサイトカインはCXCL5(妊娠糖尿病高値)、IGFBP-2(妊娠糖尿病高値)および、Leptin(妊娠糖尿病低値)であった。 2.後に妊娠糖尿病を発症した5症例と正常妊娠経過(コントロール)5症例の患者血清を用い、グロースファクターアレイ(41種類)を施行した。結果、両群間に発現差(2倍以上)のあるグロースファクターは1つも認められなかった。 3.Leptinは多数の先行論文がみられたことから、CXCL5とIGFBP-2に焦点を当て、1で用いた患者と別検体を用い、ELISAを施行した。ELISAにおいてはサイトカインアレイとは逆の結果、つまり、両分子ともコントロールの方が妊娠糖尿病罹患妊婦に比し、発現が高値であった。 4.妊娠初期、妊娠中期、妊娠末期の妊婦血漿より超遠心法を用い、エクソソームを回収した。特異的抗体(CD64、CD9、Flotilin、TSG101、ApoA)を用いて、検証した。従来マーカーになるといわれていたCD64の発現はみられず、CD9、Flotilin、TSG101の発現はみられた。最近、Cell誌(Hoshino A et al., 2020)にこの結果と同一の結果を示すものが報告されており、血漿中のエクソソームの特徴を明らかにした。 5.妊娠初期検体を継続して採取し、合計で1200検体を超えた。この中の検体で後に妊娠高血圧症候群、早産、妊娠糖尿病と発症した患者がそれぞれ20例以上集積できた。、
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
初年度はコロナ禍で実験ができなかった。実験用具も入ってこなかった。それ以降はエフォート投入不足による実験遅延が一番大きい要因であった。しかし、本年度はそれなりの実験をこなすことができ、追いついてきた。
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今後の研究の推進方策 |
1.エクソソームが安定的に採取できるようになったため、妊娠初期血漿中のqPCRまたはdigitalPCRでmiRNAを測定する。疾患のターゲットは妊娠高血圧腎症、早産、妊娠糖尿病とする。妊娠初期におけるバイオマーカーを発見することが最終的な目的であるが、妊娠初期に差がある分子はごく少数と推察している。また、PCRを用いた血中のmiRNA発現は安定しない。もし、妊娠初期のバイオマーカーが発見できないときは、まず、それぞれの疾患を発症後の血漿を用い、検証を行う。 2.妊娠糖尿病に関しては文献的検索を中心にターゲットとするバイオマーカー候補を絞り込んでおり、ADAM12、1.5AGの発現を妊娠初期血清(または血漿)を用いて、コホート内ケースコントロールの形でELISAによって測定する。結果が出なければ、別分子を検討する。 3.妊娠初期血液検体、各疾患の胎盤、血液収集を継続する。
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次年度使用額が生じた理由 |
実験の遅れにより、実験に用いる機材の購入費が減少したため。また、参加予定の学会に出席をキャンセルしたため。
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