研究課題/領域番号 |
19K18651
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
千代田 達幸 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 講師 (40445367)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 卵巣癌 / 小分子RNA / トランスクリプトーム / オルガノイド |
研究実績の概要 |
2019年度に同定したmiR-497-5p-SMARCA4の卵巣漿液性癌におけるネットワークに関して解析を進めた。公共データベースを用いた解析において、miR-497-5pの発現高値は低値に比較して乳癌および肝臓癌において予後が良好であった(それぞれp<0.001, p<0.05)。続いてSMARCA4の卵巣漿液性癌における意義を明らかにする解析を行った。卵巣漿液性癌78例を用いて免疫組織化学染色を行い、SMARCA4の発現が高いほど全生存率(overall survival)が低い(p<0.05)ことが明らかとなった。TCGAデータベースの解析においてはSMARCA4は約20%の漿液性癌で発現上昇が認められており、遺伝性乳癌卵巣癌の原因遺伝子であるBRCA1、BRCA2の変異とは相互に排他的であった。卵巣癌細胞株(OVSAHO)のSMARCA4ノックダウン株を作成し、3次元でオルガノイド培養を行ったところ、ノックダウン株は増殖がやや低くなり、細胞周期の解析においてはSMARCA4ノックダウン株はG1期が延長し、G2M期の短縮が認められた。次にSMARCA4ノックダウン株とコントロール株のオルガノイドを用いてトランスクリプトーム解析を行った。SMARCA4ノックダウン株で同様に発現低下が認められる遺伝子としてBGNが抽出され、qPCRにおいてその妥当性を確認した。また、BRG1の強制発現によりBGNの発現は高値であることをqPCRおよびウエスタンブロッティングで確認した。公共データベースを用いた解析においてBGNの高発現は卵巣漿液性癌において有意に予後が悪かった(p<0.05)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
SMARCA4強制発現株の作成を試みており、一過性ではSMARCA4の発現上昇が確認できるものの、セレクションによる安定な強制発現細胞株の作成はうまくいかず、時間がかかっている。
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今後の研究の推進方策 |
SMARCA4とBGNの関係性を明らかにするため、ノックダウン株および強制発現株を用いた解析を進める。SMARCA4は細胞増殖に与える影響はこれまでの結果から強くないと考えられ、SMARCA4高発現が予後不良である原因としては抗腫瘍薬耐性である可能性が考えられる。幹細胞性などに影響があると考えられ、SMARCA4とBGNの幹細胞性に与える影響を既に得たトランスクリプトームのデータ、TCGAデータより明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究の進捗が当初より遅れているため、研究期間を延長した。SMARCA4とBGNの関係性の確認と、既に行ったSMARCA4ノックダウン株のトランスクリプトームデータ、TCGAデータベースの解析により幹細胞性など予後不良となる原因を検索して論文にまとめる。
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