研究実績の概要 |
子宮頚癌は近年罹患率・死亡率ともに若年層で増加傾向にある疾患である。局所進行子宮頚癌には同時化学放射線療法(CCRT)や放射線単独療法による治療が中心 となるが、CCRT後5年以内に約3割が再発し、わずか1年以内で再発する症例も約1割を占める。治療開始前に放射線感受性を予測することは治療の個別化を行い 個々の患者にもっとも有効な治療を提供する上で重要であると考えられる。本研究の目的は、子宮頸癌患者における放射線感受性マーカーを探索することにあ る。先行研究により子宮頚部扁平上皮団細胞株を用いた実験で転写因子single minded homolog2 long isoform(SIM2L)の低発現患者は放射線誘導性酸化ストレスに対し HIF1Aの誘導を介し抵抗性となることを証明しており、今回は臨床応用を想定し実際の子宮頚癌患者の検体におけるSIM2Lの発現と予後を評価する。 2012年から2018年までの期間に慶應義塾大学病院産婦人科において組織診により子宮頚癌と診断された症例のうち、組織型が扁平上皮癌で同時化学放射線療法を 受けた症例で研究に同意した症例は50例の再発・死亡の有無を確認したところ、死亡例が8例、死亡例を除く再発例は8例であった。抗SIM2抗体(#ab254635, Abcam)を用いた免疫染色を行った。本抗体はsingle minded homolog2 long isoformのみでなく、バリアントであるsingle minded homolog2 short isoformも認識する抗体であったため、SIM2 long isoformを認識する抗体を新規に作成し免疫染色を試みたが、正確に評価するための染色レベルに及ばず、従来の抗体による判定を行うこととした。HIF1A(#ab51608, Abcam)およびCD31(#ab28364, Abcam)も免疫染色が完了した。現在それぞれの染色の強度・面積により低・中・高発現の3段階に分類し予後との比較を評価中である。
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