研究課題/領域番号 |
19K18656
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研究機関 | 独立行政法人日本スポーツ振興センター国立スポーツ科学センター |
研究代表者 |
西牧 未央 独立行政法人日本スポーツ振興センター国立スポーツ科学センター, スポーツ科学部, 契約職員 (20757538)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 女性アスリート / 減量 / 体内水分量 |
研究実績の概要 |
女性体重階級制アスリートを対象に,女性体重階級制アスリートの減量の実態を調査することを目的とした.女性体重階級制アスリートの通常期,試合前の減量期と基礎体温の関連を観察することで,各期における適切な摂取エネルギー量の把握や,月経周期を考慮した減量計画の実施が可能となる. 体重階級制競技(レスリング,柔道,ウェイトリフティング ) の女性アスリート 21名を対象とし(減量群 11名,非減量群 10名 ),試合前減量が月経周期に与える影響を調べた.減量群の導入日数は 13.1 ±6.1日,減量率は 5.2 ±2.1%であった (平均 ±SD).試合後の月経異常は減量群に多く観察されたが (減量群6/11名,非減量群 3/10名 ),統計学的な有意差はなかった すなわち,減量の導入日数が急速 (7日内 ) でなければ,減量による循環ストレス負荷を軽減できる可能性も示唆された. 女性アスリートにおいても,大会前に体重の5%以上の減量をおこなっている実態が明らかとなった.体重階級制スポーツを対象とした減量に関する知見は,男性選手を対象とした研究が多く,それらを参考にすることが多いかもしれない.女性の月経周期や月経異常など女性アスリート特有の減量時コンディションを考慮した減量指導は現段階ではほとんどなされていないといっても過言ではない. これを踏まえて 女性アスリート を対象に,急速減量の程度,導入日数,開始年齢,反復期間に,初経年齢,栄養指標や骨密度なども独立変数に加えた多変量解析 を行うための縦断的調査を計画している.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の予定であった対象者30名をリクルートすることはできなかったが、女性体重階級制アスリート21名を対象に、研究課題Ⅰ「女性アスリートの減量期における体組成および体水分動態の評価」について進めることができた。本研究で急速減量と月経周期の関連性が明らかになることで、体重階級制競技女性アスリートに対して、日々の健康チェックや自身への身体への気付きへ繋がると感じており、実際に対象となった女性アスリートからもそのような感想を聞くことができた。
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今後の研究の推進方策 |
卵胞期、排卵期、黄体期の3フェーズにおいて、温熱または運動負荷によって体重の2%の脱水を引き起こさせ、性ホルモンおよび各生化学指標との関連を明らかにする。測定は、各試行で脱水前、脱水後、1時間後、2時間後の4回実施する。試合前に減量を要する体重階級制女子選手10名とする(起床時の基礎体温の記録を確認し、低温機と高温期の2相性が認められたものを対象とする)。(温熱負荷)サウナ浴10分と室温での安静10分を体重が2%減少するまで繰り返す。(運動負荷)室温35℃、湿度30%の環境下で60%VO2maxのトレッドミルランニング20分と休憩10分を体重が2%減少するまで繰り返す。 測定項目は以下とする。(脱水関連指標)体組成:体重、体水分量、細胞内水分量、細胞外水分量、体脂肪量、除脂肪量、ヘマトクリット、血清電解質(Na,K,Cl)、血清浸透圧、酸化ストレス指標、抗酸化指標、アルドステロン、エストラジオール、プロゲステロン、アクアポリン2、尿量、尿浸透圧、尿中電解質(Na,K,Cl)、クレアチニン。月経周期については、月経周期および月経状態を確認するためにお月経の持続日数、月経周期、月経中の状態についてアンケート調査をおこなう。月経周期のフェーズ(卵胞期・黄体期)は、各被験者の月経周期(日数)、エストラジオールおよびプロゲステロン濃度から総合的に決定する。卵胞期は、エストラジオールが20-85pg/mL、プロゲステロンが0.92ng/mL以下、排卵期は、エストラジオールが50-550pg/mL、プロゲステロンが2.36ng/mL以下、黄体期は、エストラジオールが45-300pg/mL、プロゲステロンが1.28-29.6ng/mLとする。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初投稿予定であった学術誌へ受理されなかったため、掲載料が必要なくなったことによる差額が生じた。今年度はヒトを対象とした課題をすすめていくため、対象者数を増やして前年度使用予定であった助成金分を使用したいと考えている。
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