研究課題/領域番号 |
19K18656
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研究機関 | 同志社大学 |
研究代表者 |
西牧 未央 同志社大学, スポーツ健康科学部, 助手 (20757538)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 急速減量 / 女性アスリート |
研究実績の概要 |
レスリングなどの体重階級制競技選手の多くは、試合前の計量にて規定体重を下回る必要があるため、食事制限、水分制限を用いて減量をおこなう。女性アスリートのウェイトコントロールは、周期的に性ホルモン濃度が増減する月経周期を考慮して取り組むべきである。しかし、脱水を主とした急速減量と月経周期の関係は明らかとなっていない。そこで本研究は、脱水を主とした急速減量によって引き起こされる性ホルモン応答、体内水分量および血中電解質濃度の動態を明らかにし、体重階級制女性アスリートの最適な減量方法を確立することを目的とする。 体重階級制競技(レスリング、柔道、ウェイトリフティング) の女性アスリート21名を対象とし(減量群11名,非減量群10名)、試合前減量が月経周期に与える影響を調べた。減量群の導入日数は13.1 ±6.1日、減量率は5.2 ±2.1%であった(平均±SD)。試合後の月経異常は減量群に多く観察されたが(減量群6/11名,非減量群3/10名),統計学的な有意差はなかった。すなわち、減量の導入日数が急速(7日内) でなければ、減量による循環ストレス負荷を軽減できる可能性も示唆された。 ヒトを対象とした急速減量研究では、アスリートに競技大会の合間を縫って被験者になってもらい体重・血液・尿・唾液などを解析するため、大会に向けた減量に加えて更なるストレスをアスリートに与えてしまうことや、臓器ごとの代謝機構を解析することは難しい。したがって、今後は動物実験および生化学・分子生物学的解析手法を用いた分析により、本課題を解決していく。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
所属移動に伴う実験実施場所の変更により、ヒトを対象とした実験を実施できる環境を整えることができなかった。当初の研究計画を変更し、動物実験による計画を立案した。動物実験および生化学・分子生物学的解析手法を用いた研究業務に従事し、本研究の遂行に必要な基盤技術の習得、具体的には、モデル動物の視床下部組織の剖検、性ホルモンに関与するタンパク質発現量の測定の取得に取り組んだが、時間を要してしまった。
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今後の研究の推進方策 |
これまでヒトを対象とした研究により、急速減量が骨格筋量や内分泌応答に及ぼす影響について報告されているが、各臓器におけるタンパク質代謝の挙動については十分に明らかにされていない。さらにほとんどが男性アスリートや雄の実験動物を対象とした研究であり、女性アスリートを対象とした研究が行われていないのが現状である。本研究課題では雌ラットを用いた動物実験により、女性アスリートの急速減量が骨格筋におけるタンパク質代謝応答に及ぼす分子メカニズムを明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
所属移動および実験実施環境の変更により、当初予定していたヒトを対象とした実験の実施が困難となったため、モデル動物を用いた動物実験の準備を開始した。各種生化学実験の基本的手法の取得に時間を要してしまったため。 次年度からは、急速減量による各臓器の組織学的な形態変化を観察し、急速減量による各臓器のタンパク質代謝変化を明らかにする。雌ラットに11日間のレジスタンス運動と自由摂食させ、その後、3日間の絶食により急速減量を行う。絶食3日目には、1日間の絶水を合わせて実施する(図2)。実験開始から急速減量期間終了まで、体重、血液および尿を経時的に採取し、急速減量の進行レベルを調べる。急速減量の開始時期を発情前期に合わせるために、雌ラットの膣スメア採取を毎朝8時から9時の間に実施する。急速減量開始3日後に全ての群のラットを屠殺し、血液、尿および骨格筋〔①上肢(浅指屈筋、深指屈筋、上腕二頭筋)、②下肢(腓腹筋、ヒラメ筋、長指伸筋、長母肢屈筋〕、視床下部および卵巣を採取し、重量を測定する。
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