研究実績の概要 |
これまでの研究成果から卵巣癌明細胞癌細胞株(TOV21G, RMG-1, HAC2, ES-2)においてスルファサラジン(SAS)とpaclitaxelの併用投与を行うとTOV21G, RMG-1ではアポトーシスが誘導され、HAC2では細胞死が誘導されず、ES-2ではフェロトーシスが誘導されることが明らかなった。グルタチオン代謝経路関連蛋白の発現をwestern blotting法で検討したところ、ES2ではグルタチオンペルオキシダーゼ4(GPx4)の発現低下を認め、そのためSASによるフェロトーシス誘導効果が高いことが明らかになった。しかしながら、ES-2と同様にGPx4の発現が低下しているCaov-3ではSASとpaclitaxelも併用でフェロトーシスが誘導されなかった。このメカニズムを明らかにするためES-2とCaov3における細胞内鉄イオン濃度を計測したところ、Caov3ではES-2と比較して有意に鉄イオン濃度が低下していた。Caov3に対して鉄を添加しSASとPTX併用投与を行ったところフェロトーシスの誘導を認めた。これらの結果からフェロトーシスの誘導にはGPx4低下と細胞内鉄イオン濃度が重要であることが明らかになった。さらに明細胞癌細胞株RMG-1をマウスの皮下に接種し、①vehicle(PBS)、②paclitaxel、③SAS、④paclitaxel+SASを4週間投与して腫瘍体積を計測し、SASとpaclitaxelの併用による抗腫瘍効果を検討したところ、SASとPTX併用投与は、それぞれの単剤投与に比較して抗腫瘍効果を増強した。 卵巣明細癌においてSASとpaclitaxelの併用はpaclitaxelの抗腫瘍効果を増強し、薬剤耐性である明細胞癌における新たな治療法となり得る可能性が示唆された。
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