申請者らは、原発性高プロラクチン血症と産後乳汁分泌不全を合併する患者の遺伝子解析を行い、プロラクチン受容体(PRLR)の新規遺伝子多型による機能欠損症 を同定し報告した。ヒト以外の動ではは、家畜・愛玩動物などを除けば、乳汁分泌不全個体の子供は栄養失調のため死亡してしまう。一方、ヒトでは、乳汁分泌不全の場合でもも、人工乳での栄養が可能である。言い換えると、ヒトは、乳汁分泌量の差が許容さ れた動物であると考えられる。PRLR機能欠損症例では産後の乳汁分泌が欠如、ヘテロ機能欠損症例では乳汁分泌が数ヶ月で止まってしまい、人工乳に切り替えたというエピソードを持っていた。これらの知見より、乳汁の分泌・合成が生殖活動、健康状態とは別の独立した機能であり、様々な遺伝子の多型により遺伝的体 質によって乳汁の分泌・合成が規定され、授乳が困難な人たちかが存在するのではないかと考えるに至った。本研究では遺伝子多型の観点から乳汁分泌不全を説明できるかの検証を行った。 少数ではあるが、乳汁分泌不全症例のPRLR遺伝子の解析を行った結果PRLRに病的なバリアントを見出すことはできなった。ToMMo 4.7KJPMデータベースを解析した結果、日本人では我々が過去に報告したP269Lを含む9種類のPRLR病的バリアントが存在する可能性が示唆され、そのアレル頻度は0.0015であった。この知見はin vitroの機能アッセイと合わせて、論文投稿準備中である。また、J-MIC studyデータベースより授乳期間の短い症例のGWAS解析を行った結果、関連すると思われる遺伝子が2種類抽出された。
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