研究課題/領域番号 |
19K18671
|
研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
八木 麻未 大阪大学, 医学系研究科, 特任助教(常勤) (30793450)
|
研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2021-03-31
|
キーワード | がん検診 / 受診勧奨 / 行動経済学 |
研究実績の概要 |
当研究は、20歳の娘を持つ親に対して、子宮頸がんに関する臨床医学的・社会医学的情報を行動経済学的手法にて提示し、娘への子宮頸がん検診受診の勧奨を提案することで、親自身のがん検診受診意向を高め行動変容へつなげるメッセージ資材の開発を目指し、その効果を検証するものである。 2019年度は、まず20歳の娘を持つ親に対して、がんに対する考え方・子宮頸がんに関する知識・娘のがんに関する不安等を聴取し後に、娘の子宮頸がん検診受診勧奨を依頼するメッセージを複数提示して、娘への子宮頸がん検診受診意向がどう変化するか等を探索した。インタビューは東京在住の母親7名・父親3名の計10名に対して対面式で実施した(60分/1名)。以下に得られた知見を記す。 自治体からの案内がきっかけとなって、夫婦間や母娘間においてがん検診についての会話は多くの家庭で生じていることが明らかとなった。また、子宮頸がん検診に関して提供された情報は、娘に対する検診の勧めをより促進していた。娘の子宮頸がん検診受診勧奨を依頼するメッセージに関しては、「子宮頸がん検診を受けた20歳の女性は、お父さん・お母さんが受診していたから、お父さん・お母さんに勧められたから、という人がほとんどでした。あなたが受診する、または娘さんに受診を勧めることは娘さんの健康を守ることにつながります。」というメッセージは、娘への受診の勧めの意向が高まるだけでなく、本人(親)のがん検診受診意向の向上にもつながっていた。親の受診を効果的に促すには、娘の子宮頸がん検診に関する情報に加えて、親に向けてのがん検診の具体的な情報発信が必要だと考えられた。また、多くの対象者は、「子宮頸がんの情報を目にした際には子宮頸がんについてのみ考える」傾向が見られたため、娘への受診勧奨を通して親自身の受診も促すためには、ターゲットを母親の子宮頸がんに絞る方がより効果的と考えられた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2019年度は、まず20歳の娘を持つ親に対して、がんに対する考え方・子宮頸がんに関する知識・娘のがんに関する不安等を聴取し後に、娘の子宮頸がん検診受診勧奨を依頼するメッセージを複数提示して、娘への子宮頸がん検診受診意向がどう変化するか等を探索する予定であったが、これに関しては全く予定通りに実施できた。成果については上述の如くである。すなわち、「子宮頸がん検診を受けた20歳の女性は、お父さん・お母さんが受診していたから、お父さん・お母さんに勧められたから、という人がほとんどでした。あなたが受診する、または娘さんに受診を勧めることは娘さんの健康を守ることにつながります。」というメッセージが、娘への子宮頸がん検診受診勧奨のみならず、母親の子宮頸がん検診受診意向の向上にも有効であった。それを踏まえて、娘の20歳の子宮頸がん検診の勧奨を母親に依頼することで、母親の子宮頸がん検診受診意向を高めるリーフレットを作成して、来年度にその効果を検証することとした。インタビュー調査は10名(母親7名・父親3名)に行ったが、得られた反応は大きなばらつきがなく、概ね同様の会等であったため、大規模なインターネット調査による量的評価は不要と判断した(これについても計画書に記載していた通りの手順である。)
|
今後の研究の推進方策 |
上述の進捗を踏まて、2020年度は、自治体での介入調査を行う。自治体において、20歳の娘を持つ家庭をランダムに2群に分け、一方の群には上記で開発したリーフレットを送付し(介入群)、他方の群には通常の検診案内のみ送付する(コントロール群)。この2群での20歳の娘の子宮頸がん検診受診率を比較検討する。さらに、上記の介入群とコントロール群における母親の子宮頸がん検診受診率を解析する。なお、子宮頸がん検診については2年間ごとの受診が国で進められているため、2年間における受診率を解析する(研究期間終了後も継続)。当初は父親・母親の5大がん検診受診率を調査する予定であったが、インタビュー調査の結果を受けて、上記の通り、より効果的に行える形に研究計画を改変した。 なお、現在、新型コロナウイルス感染拡大の影響で保健所業務が混乱を来しており、当研究の実施においては、その点に十分留意し、保健所業務および住民の健康に支障が生じないように配慮する予定である。
|