研究課題/領域番号 |
19K18678
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研究機関 | 自治医科大学 |
研究代表者 |
石田 洋一 自治医科大学, 医学部, 講師 (70772143)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 末梢血NK細胞 / 妊娠 / 網羅的解析 / 遺伝子 / マイクロRNA / マイクロアレイ / 着床 / 妊娠維持機構 |
研究実績の概要 |
脱落膜NK細胞が妊娠維持機構に関わっていることは知られているが、絨毛と接する母体血中に存在する末梢血NK細胞が妊娠維持機構に関わっているかどうかは分かってない。母体末梢血NK細胞が着床や妊娠維持機構に関わっている、という仮説を立て、妊娠前と妊娠中の女性から末梢血サンプル採取を開始した。当院に通院している患者から同意を得て、妊娠前(卵胞期・黄体期)、妊娠期(妊娠初期、妊娠中期、妊娠後期)に末梢血を採取した。卵胞期26例、黄体期18例、妊娠初期27例、妊娠中期8例、妊娠後期20例から血液を採取して、磁気ビーズを用いてCD56陽性細胞の母体末梢血NK細胞をネガティブ分離した。これまでの実験結果では、卵胞期から黄体期にかけて母体末梢血NK細胞数の有意な増加を認め、黄体期から妊娠初期にかけて有意に減少し、さらに妊娠初期から後期にかけて有意に減少した。また妊娠期では妊娠前より母体末梢血NK細胞が有意に減少していた。そして、卵胞期、黄体期、妊娠初期における母体末梢血NK細胞の遺伝子発現マイクロアレイを、同一人物から採取したサンプルを用いて、卵胞期-黄体期6例、黄体期-妊娠初期5例、卵胞期-妊娠初期6例を比較検討した。その結果、それぞれの比較において数千種類の有意な発現変動を認めたため、母体末梢血NK細胞が着床や妊娠維持機構に関わっている可能性が示唆された。現在解析中だが、卵胞期-黄体期ではIL-6など、黄体期-妊娠初期ではIL-10など、卵胞期-妊娠初期ではMMP9などの有意な発現変動を認めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初の予定より、同一人物からの卵胞期、黄体期、妊娠初期の遺伝子発現マイクロアレイの実験やその解析に時間を要し、また発現確認のためのRT-PCR法をどの遺伝子に対して行うか検討していたために時間を要した。マイクロRNA(miRNA)の網羅的解析については、サンプル量が十分でないために完遂できないと判断したため、そのかわりに発現を評価したいmiRNAについてRT-PCR法で発現を評価することにした。
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今後の研究の推進方策 |
同一人物から採取した卵胞期、妊娠初期の末梢血を用いて、すでに施行した遺伝子発現マイクロアレイのデータから、有意な発現変動を認め重要と判断した遺伝子についてRT-PCR法で発現変動を確認する予定である。またこれまでの文献で評価するべきと判断したmiRNAについても、RT-PCR法を用いてその発現の有無や変動を評価する。その結果から妊娠のメカニズムを考察し、妊娠期におこる疾患の解明につなげたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
遺伝子・miRNAのRT-PCRの実験を今年度中に終えることができなかった。次年度、RT-PCR法に伴う消耗品や遺伝子解析ソフトのライセンス料に使用する予定である。
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