研究課題/領域番号 |
19K18681
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
狩野 元宏 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 講師(非常勤) (00573403)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 卵胞発達 / ミュラー管抑制因子 / デヒドロエピアンドロステロン |
研究実績の概要 |
本研究では、多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)や原発性卵巣機能不全、卵巣予備能低下といった卵巣疾患について、ミュラー管抑制因子(MIS)とデヒドロエピアンドロステロン(DHEA)の作用から卵胞の動員・成熟・発達がどのように制御されているのかを明らかにすることを目標とし、本年度は昨年度に引き続いてin vitro系の実験を中心に行ったが、新型コロナウイルス感染症の流行に伴って実験の進行に非常な困難を伴った。特に後述するとおり、実験動物を用いたin vivoおよびex vivoの実験については実施できなかった。 まず、in vitro系については、昨年度に確立した細胞株KGNおよびCOV434を用いた実験系を用いて、DHEAがMISやDHEAの関連遺伝子の発現変化に与える影響を観察した。DHEAの濃度や溶解の方法を変えて複数の条件で実験を行って、遺伝子発現変化を解析した。いずれの検証も複数回行って、各回の実験については特に問題のない結果が得られており、DHEAに対する反応も確認できたと考えているが、目的とする遺伝子発現については各回で一定した傾向のある結果が得られなかった。したがって、細胞株による実験においてはDHEAの投与によってMIS関連遺伝子の発現に変化を認めない、と結論づけた。 計画していたin vivoおよびex vivoの実験については、in vitro系の実験で期待した結果が得られなかったことにくわえ、新型コロナウイルス感染症の流行によって安定的に実験を行う環境が得られなかったことから、動物愛護・倫理的観点から実験の実施を差し控えざるを得なかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
新型コロナウイルス感染症の流行や緊急事態宣言に伴って、計画的に実験を行う環境が得られるまでに時間がかかってしまった。また研究代表者のエフォートを臨床にシフトせざるを得なかったため、特に2020年度の前半は実験が行えなかった。また、実験動物を用いた実験については、安定的な実験環境において適切に実験動物を飼養するべきであり、上記のような異常環境によって実験を進められなかった。それによって元々やや遅れていた計画がさらに遅延してしまった。
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今後の研究の推進方策 |
in vitro実験では期待した結果が得られていないため、細胞株を用いた実験については一旦終了とし、マウス卵巣を用いた初代細胞培養に切り替えてDHEAやMISの影響を検討する。アレイを用いて広く遺伝子の発現変化を確認して、PCOSモデルにおける関連遺伝子の発現変化を予測すると同時に、検討すべき候補遺伝子やたんぱく質について検証しながら計画を適宜修正していく。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス感染症の流行の影響で研究計画を中断せざるを得なくなってしまったことが最大の原因である。また、予定していた学会への参加旅費についても開催が取りやめになったこと、計画を予定通りに進められていないことなどから使用していない。しかし計画は遅ればせながら徐々に進んでおり、必要な経費は昨年同様に生じるほか、本年度からは実験系はより高額な、実験動物を用いた実験を始める予定であり、その分に要する経費は昨年度以上に必要である。さらに新型コロナウイルス感染症の流行に伴って必要となった各種消毒薬や手袋などの防護具といった消耗品購入費用に当てる必要がある。
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