研究実績の概要 |
我々は、新規抗がん剤である分子標的治療薬の卵巣毒性についての研究を行った。研究対象としている新規抗がん剤は、チロシンキナーゼ阻害薬のイマチニブ、PARP阻害薬のオラパリブである。 (1)イマチニブ<in vitro実験>マウスの卵巣培養において、イマチニブ添加群は培養液中のエストラジオール濃度の上昇が抑えられた。培養後の卵巣内卵胞数も、イマチニブ添加群では発育卵胞数の減少を認めた。また、イマチニブ群でFSHR,CYP19a,c-kit,PDGFRの発現が低下していた。<in vivo実験>21日齢マウスにイマチニブを14日間投与したところ、採卵数の低下を認めたが、原始卵胞数の低下を認めなかった。3週間の休薬期間を置くと、採卵数は回復した。以上よりイマチニブは顆粒膜細胞や卵胞発育に影響を及ぼし、卵巣毒性がある可能性が示唆されたが、短期投与では可逆的な影響と考えられた。
(2)オラパリブ<in vitro実験>マウスの卵巣培養において、オラパリブ添加群では、顆粒膜細胞マーカー(CYP19a,FSHR)の低下がみられ、培養液中のエストラジオール濃度は低下した。オラパリブ添加群では発育卵胞数の低下、閉鎖卵胞の増加を認めた。さらに顆粒膜細胞培養ではオラパリブ添加群で顆粒膜細胞マーカーの低下を認めた。<in vivo実験>21日齢マウスを用いてオラパリブを14日間経口投与した後、PCRではオラパリブ群で顆粒膜細胞マーカーの低下、卵胞数カウントでは閉鎖卵胞数の増加、その他の卵胞数の減少を認めた。さらに体外受精では、オラパリブ群で採卵数の減少を認めた。以上よりオラパリブは顆粒膜細胞障害による卵巣毒性がある可能性が示唆された。
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