研究課題/領域番号 |
19K18685
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研究機関 | 国立研究開発法人理化学研究所 |
研究代表者 |
阿部 高也 国立研究開発法人理化学研究所, 生命機能科学研究センター, 技師 (10720609)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | in vitro着床モデル / 着床 / 胎盤形成 |
研究実績の概要 |
受精後に子宮に着床して胎盤を形成して発生する有盤類において、着床そして胎盤形成は発生において必要不可欠である。しかしながら、着床後の胚と子宮間で起こる相互作用や胎盤形成の分化メカニズムなど明らかにされていないことが多く残されている。その原因の一つとして試験管内(in vitro)モデルが確立されていないことが挙げられる。そこで本研究計画ではin vitro着床モデルの開発を行う。 子宮上皮幹細胞と間質細胞を用いた擬似子宮組織の三次元培養法を確立するため、間質様の組織として代用できる試料(三次元培養ゲル)を幾つかの候補から選別した。その結果、間質細胞をゲル内部に埋め込み、ゲル上に上皮細胞を播くことで子宮上皮様擬似組織の培養が可能となった。上皮細胞と間質細胞で発現する遺伝子(マーカー遺伝子)の抗体染色により、三次元培養下においてもそれらの細胞が性質失わずに維持していることが確認できた。また、細胞が生きた状態でもその性質を評価することができるように、マーカー遺伝子座へ蛍光タンパク質をノックインしたマウスを樹立した。 擬似子宮組織の機能性評価には、マーカー遺伝子の発現解析以外の方法として、擬似子宮組織内で着床前マウス胚を培養し、胚の発生や着床を再現することが求められる。そのためマウス胚を用いた共培養に着手した。 近年in vitroで組織を再構築する際に、その組織の構造(かたち)が細胞へ与える影響が注目されている。組織切片による観察では着床間近の胚は子宮内で窪みに包み込まれた様な状態であることから、現状の擬似子宮組織は平であるため、窪みを作ることに着手した。ゲルへおよそ50μmの着床前胚が入る大きさの微細な穴を作るために、微細加工技術により鋳型スタンプを設計して作製した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
三次元培養ゲルの選別で機能性とゲル強度の両面において適する試料の選別が難航したが、上皮様の構造を作製することが可能となった。しかし、今後も最適なものを検討していく必要性がある。マーカー遺伝子のノックインマウスの作製では、標的遺伝子の機能が失われるとその表現系により致死になるケースがありCRISPR/Cas9システムによる樹立を難しくしたが、何度か試すことで目的のノックインマウスを得ることができた。 新型コロナウイルス感染拡大防止のため、在宅勤務および制限下での実験により全体的な進行の遅れが生じた。
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今後の研究の推進方策 |
in vitroの(擬似子宮組織などの環境下ではなく)ディッシュ上でのマウス着床前後胚の培養方法が報告されているが、ディッシュ上で培養するため、胚は扁平状に発生し、in vivoの円筒状の構造とは大きくことなる。また、その培養の効率は低く、安定した培養方法とは言い難い。しかしながら、擬似子宮組織下においての胚培養条件においては、先の報告に参考にして必要な技術を習得しながら進める必要がある。 胚が着床する場である子宮内の構造(窪み)を模擬するための、ゲルへ窪みを作るスタンプが完成した。窪みは数百μmほどの微細な構造であり、脆く崩れやすいため作製法やゲルの強度など最適化が必要である。その後、マウス胚を窪みに入れて培養する。擬似子宮組織への胚の着床について評価する。 生体内では着床後間のなく胚周辺の間質領域で脱落膜が形成され、胚は胎盤ができるまで脱落膜を通して栄養を得る。脱落膜化初期の間質(primary decidual zone)において発現が上昇する遺伝子(マーカー遺伝子)を指標とすることで、脱落膜化を評価することができる。そこで幾つかのマーカー遺伝子の蛍光タンパク質ノックインマウスを作製する。これらのノックインマウス由来の間質細胞を用いることで脱落膜化を細胞が生きた状態で評価することができると考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス感染拡大防止のため在宅勤務期間があり、実験が行えなかったため翌年度分として使用する。
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