研究課題
母子間免疫寛容の機序は、腫瘍が宿主の免疫から逃れる機構と類似し、T細胞免疫が重要な役割を果たしている。単一細胞レベルで制御性T細胞(Treg)と細胞障害性T細胞(CTL)のT細胞受容体(TCR)解析を行い、妊娠と腫瘍での差異について検討した。妊娠初期では、染色体正常流産(胎児に異常がない流産)で、子宮局所のTregの数的減少と、細胞障害活性の高いeffector memory CTLのクローナルな増加が認められた。一方、妊娠後期の妊娠高血圧腎症では、子宮局所において、クローナルなTregの減少と、クローナルなeffector memory CTLのPD-1(抑制型補助刺激分子)発現率の低下が認められた。妊娠初期は胎児抗原を認識するCTLを抗原非特異的にTregが抑制すること、妊娠後期は抗原特異的CTLの補助刺激分子による活性抑制とTregによる抗原特異的な免疫抑制が重要であることが判明した。子宮体癌では腫瘍浸潤リンパ球(TIL)と末梢血のPD-1+CD137+CD8+T細胞(活性化CTL)とPD-1-CD137-CD8+T細胞(非活性化CTL)に着目した。TIL中には活性化、非活性化CTLのどちらも認めたが、末梢血はほぼ非活性化CTLであった。クローナルに増殖したCTLは、TIL中の活性化CTLに最も多く認められた。妊娠、腫瘍ともにCTLは局所で抗原を認識しクローナルに増殖し、PD-1を発現することが判った。末梢血に注目すると、妊娠ではCTLとTregのクローナリティは、正常妊娠と異常妊娠で差を認めなかった。一方、癌患者では、高頻度マイクロサテライト不安定性癌症例(免疫原性が高い癌)と、非高頻度癌症例では、前者で末梢血CTLクローナリティーが有意に高かった。腫瘍では末梢血が局所の病態を反映しうる点が妊娠とは異なることが判明した。
すべて 2021 2020
すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (5件) (うち招待講演 3件) 図書 (3件)
Human Immunology
巻: 82 ページ: 346-352
10.1016/j.humimm.2021.01.019.
Frontiers in Immunology
巻: 11 ページ: 1082
10.3389/fimmu.2020.01082. eCollection 2020.
Journal of Reproductive Immunology
巻: 141 ページ: 103165
10.1016/j.jri.2020.103165
小児内科
巻: 52 ページ: 8-13