研究課題/領域番号 |
19K18693
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
芳川 修久 名古屋大学, 医学部附属病院, 助教 (60804747)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | p53 / 子宮頸癌 / 卵巣癌 / DDIT4 / LA-ICP-MS |
研究実績の概要 |
我々は前年度の検討結果よりp53の活性化に伴って上昇するDDIT4タンパクの機能解析に進むこととしていた。p53の活性化はその上流として低酸素ストレスが影響していることが知られており、そのマスターレギュレーターの一つとしてDDIT4という分子が報告されている。複数の癌種において低酸素ストレス反応性にDDIT4が上昇し、悪性形質を増強することが知られておりこれにp53の変異の有無がどのように影響を与えているか検討することとした。DDIT4の発現抑制を得るためにsiRNAをValidationした。また、DDIT4の発現抑制により増殖抑制効果やシスプラチン抵抗性が変化する。また、DDIT4の機能実験として、遊走能・浸潤能にも影響を与えることを確認している。臨床組織検体における発現解析として子宮頸癌臨床組織検体を用いてDDIT4の発現比較を行い、リンパ管侵襲やリンパ節転移といった悪性予後と相関する臨床病理学的因子と有意な相関関係を見出した。以上よりDDIT4はリンパ系の転移を誘導する因子であることが示唆されたため、現在子宮頸癌同所移植モデルマウスを作成し、DDIT4発現の多寡によりリンパ転移が変化するか等について評価を加えていく予定としている。また、RNAの網羅的解析によりDDIT4が制御する重要なパスウェイ・分子の同定を目指したい。 また、別の観点からプラチナ製剤耐性に関する新たな知見としてレーザーアブレーション質量分析を用いたプラチナ抵抗性予測の可能性を検討を開始しており、組織内プラチナ分布によりその後のプラチナ感受性を予見できる可能性があることを見出している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
変異型p53の強制発現を用いた系においての進捗は当初の想定より遅れているものの、DDIT4の発現抑制系を確立するとともに、増殖や抗がん剤耐性に関するBiological functionを確認することができたという前年度の実績を受けて、さらなる機能実験を追加した。仮説通りの結果となるものもあったが、マウスモデルの構築やshRNA安定抑制細胞株の樹立等まだ途中のものもあるため、全体としてやや遅れている状況となっている。
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今後の研究の推進方策 |
以下の通り推進方策を考えている。 1.補完的にデータを収集する観点で、微量元素マッピング手法を用いた微量元素分布の評価などを合わせて行っていく。この微量元素マッピング法は、質量分析の技術を用いて腫瘍組織におけるプラチナ・銅・亜鉛などの分布や濃度を詳細に把握することができる最新の技術である。これを活用することにより、抗がん剤耐性や臨床的悪性度に相関する特徴を把握することにつながる可能性がある。これのPreliminaryな知見は上記の通り得ており、今後はそのプラチナ分布をもたらすメカニズムに迫る卵巣癌オルガノイドモデルを用いた研究を進めていく。 2.DDIT4の機能解析を進める。特に変異型p53の有無により増殖や抗がん剤耐性といった生物学的特徴にどのように影響を与えるかについて、検討を進める。既にDDIT4抑制にともなって生じる変化は細胞レベルで一貫したものを得ており、マウスモデルによるin vivoでの検証やRNA発現解析による関与するパスウェイの評価を行う。 以上を推進することで、研究課題の達成に繋げていく。
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