胎児発育不全(FGR)において、PDE5阻害薬:タダラフィルの経母体投与を行った胎児の超音波ドプラデータより、血行動態への影響を検討した。対象は20週以降34週未満のFGR(胎児推定体重<-1.5 SD)と診断された単胎症例で、従来型治療群45例と、タダラフィル治療群44例、合計89症例を検討した。臍帯動脈、中大脳動脈、子宮動脈のPIの、治療開始から1週間の変化の解析を行った。さらにEarly-onsetである登録時に32週未満であった症例、および治療開始時に胎児推定体重が-2.0SD以下であった症例を抽出し、副次的に解析した。臍帯動脈PIは治療開始時および治療開始から1週間後では減少する傾向はあったものの、有意な差を認めなかった。同様に、32週未満の症例では臍帯動脈PIで減少傾向を認めたものの、有意な差を認めなかったが、1週後にPIが減少した症例数をタダラフィル治療群および従来型治療群で比較すると、タダラフィル治療群で有意に多かった。また胎児推定体重が-2.0SD以下の症例では、臍帯動脈PIは、治療開始1週間後有意に減少していた。 胎盤機能を評価するためのマーカーである Placental growth factor (PlGF)において、分娩経過良好で経腟分娩が成功した26例と、胎児機能不全で帝王切開となった7例で比較すると、有意に胎児機能不全症例でPlGFが低値であった。 MRIの位相contrast法にて、タダラフィル投与FGR群6例と、週数をマッチさせた正常妊婦6例の両群に、約1週間の期間をおいて2回子宮動脈血流量の測定を行った。タダラフィル投与FGR群では内服後1週間で子宮動脈血流量が有意に増加していた(p<0.05)。
|