研究課題/領域番号 |
19K18695
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
中川 慧 大阪大学, 医学系研究科, 助教 (30650593)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | アネキシン / 卵巣がん / アンチセンス / プラチナ抵抗性 / 人工核酸 |
研究実績の概要 |
卵巣癌のプラチナ製剤抵抗性の克服にむけて、アネキシンA4が細胞内のプラチナ排出に関わる重要な分子と考え、本研究においては、アネキシンA4を標的とする人工核酸を用いた核酸医薬を作成し、投与方法や構造 の工夫により、卵巣明細胞がんのプラチナ抵抗性の改善を目指すとともに、実臨床に応用できるような成果を得ることを目的とした研究を進めている。令和元年度においての成果は、手術摘出卵巣癌組織由来Patient-Derived tumor Xenografts (PDX)の開発として、卵巣癌の手術検体を超免疫不全マウス(NOGマウス)の皮下に移植し、PDXマウス樹立を試みた。現在3例が増殖を待機している状況であり、樹立を試みている。今後安定的な増殖が確立されれば、樹立株におけるAnx A4の発現頻度や、薬剤に対する反応等の評価が可能になると考えられる。 また他のプラチナ耐性を示す婦人科腫瘍での検討として、婦人科腫瘍の中で卵巣癌と同様非常に予後が悪く、プラチナ抵抗性を示す子宮肉腫のAnx A4が高発現する細胞株について、si RNAを用いて、増殖やプラチナ耐性を検討した。その結果、当初予想されたプラチナ耐性に与える影響は少なかったものの、増殖に直接作用していると考えられる結果が得られ、現在増殖に関わる因子や接着に関わる因子を解析しており、増殖阻害の機序を探索している。 また、卵巣癌細胞株に対するAnx A4アンチセンスの効果については論文投稿にむけて、アンチセンスの卵巣癌細胞株への最適な投与条件の調整を確認するなど最終的な確認を行っており、年度前半中には論文投稿を予定している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
令和元年度予定分が令和2年度に予定していた、肉腫のアネキシンA4発現株の探索やその機能の解析等を先行して行い、全体としては、2年で予定している内容の半分程度は実行できた。 一方、COVID19の感染拡大により、covid関連の研究以外の全ての研究が原則停止になった影響で、予定していた新規の組織収集などは一旦全て停止になった。このため、2020年3月から5月において、本研究に関わる実験、研究活動がほぼ完全に停止した状態となり、PDXモデルの患者検体の収集が困難になったり、細胞株を一旦全て休眠させた影響もあり今後の進捗については課題が残る。
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今後の研究の推進方策 |
約3ヶ月間研究活動がほぼ完全に停止したことで、組織の収集が困難になったこともありPDXの樹立など一部の研究が期間内に完全に達成することが困難になることが予想される。一方で、予備的に探索予定であった子宮肉腫の細胞株において、これまでに予想されていたプラチナ体制だけでなく、直接増殖に関わる機序の存在が示唆されることから、予定していた研究をなるべく元のスケジュールに近い軌道に乗せるとともに、新規に子宮肉腫で増殖への影響が示唆された細胞株を中心に、増殖因子や細胞接着に関わるこれらの機序の解明を行っていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
引き続き物品購入を行う予定であるため、少額の残高は使い切らず繰り越しとした。
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