卵巣癌のプラチナ製剤抵抗性の克服にむけて、卵巣癌のプラチナ抵抗性に重要な役割を果たすと考えらるアネキシンA4を標的とする 人工核酸を用いた核酸医薬を作成し、投与方法や構造の工夫により、卵巣明細胞がんのプラチナ抵抗性の改善を目指すとともに、実臨床に応用できるような成果を得ることを本研究の目的としている。 令和2年度においての成果は、手術摘出卵巣癌組織由来Patient-Derived tumor Xenografts (PDX)を超免疫不全マウス(NOGマウス)の皮下に移植し、PDXマウスを1系統樹立した。また、実際にinvivoで投与した際にアネキシンA4の抗体医薬が免疫反応を誘導するかどうか検討を行なったが、有意な免疫を誘導するという結果は得られず、アネキシンA4の腫瘍増殖抑制効果は細胞内のプラチナ排出を抑えて細胞内プラチナ製剤濃度を上昇させることで抵抗性を改善していることが中心と考えられた。また、in vivo でよりアネキシンA4の発現を抑制できる条件を検討した。これらの結果をまとめ、現在論文投稿中である。
また他のプラチナ耐性を示す婦人科腫瘍での検討として、子宮平滑筋肉腫のAnx A4が高発現する細胞株LMS、SKNについて、siRNAを用いて、アネキシンA4をノックダウンすると直接的な増殖抑制効果が認められたが、プラチナ耐性には変化がなかった。これらの機序解明として、ウェスタンでシグナル解析を行ったところN FκBのシグナル系の関与が示唆された。これらについても卵巣癌と同様に抗体医薬を使用して治療効果の有無を検討したが、抗体医薬ではアネキシンA4のノックダウン効率がSi RNAより弱く、有意な結果を得られなかった。 今後は、卵巣癌において、さらに抗体医薬の効果を高める方法を検討していく予定である。
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