研究課題
糖尿病モデルマウス(KK/TaJclおよびBKS.Cg-Dock7m+/+Leprdb/J)の妊娠を成立させ、血圧測定、タンパク尿検査などの妊娠高血圧腎症への進行度をモニタリングした。胎盤の低酸素化はHIF-1αの誘導性を評価し、血管新生因子や抗血管新生因子であるsFlt-1、PlGFについては胎盤側は定量的PCR法、血中のものはELISA測定を行い評価を行った。PKCβの活性化状態においても胎盤組織について行い、活性化に必須なリン酸化体を認識する抗体を用いて組織染色(活性化の頻度や分布状態)およびELISA測定を行いデータ化した。さらに、PKCβ阻害剤を糖尿病合併妊娠モデルマウスに投与し、その変化を検討した。実験の結果、コントロールマウスに比較し、糖尿病合併妊娠モデルマウスでは、胎盤におけるPKCβの活性化の有意な増加を認め、胎盤および母体血中において抗血管新生因子であるsFlt-1が有意に上昇しており、また、血管新生因子であるPlGFが有意に低下していた。さらに、PKCβ阻害剤を投与することによりこれらの変化を抑制することが可能であった。これらの結果から、糖尿病合併妊娠モデルマウスの胎盤において、[PKCβ]-[sFlt-1の上昇およびPlGFの低下]-[妊娠高血圧腎症の病態の発症と増悪]をつなぐ分子経路の存在の可能性が示唆され、さらには、糖尿病合併妊娠モデルマウスにPKCβ阻害剤を投与することにより、この経路を遮断することが可能であった。これらの研究データは第76回日本産科婦人科学会学術講演会のインターナショナルセッションJSOG Congress Award Candidateにて講演発表を行い、JSOG Congress Encouragement Awardを受賞した。また、国際学会FIGO 2023 World Congressで講演発表を行った。
すべて 2023
すべて 学会発表 (2件) (うち国際学会 1件)