当分野では、上皮性卵巣がん(卵巣癌)が進展する過程において、癌微小環境の構成要因の一つであるマクロファージ(Mφ)が腫瘍形成促進の性格を有するM2Mφに分化し、卵巣細胞と共依存的な細胞間相互作用を有していることを初めて報告した。さらに卵巣癌の組織学的悪性度とM2 Mφの浸潤には関連があることも証明している。しかし、手術前後に抗癌剤が主治療となる卵巣癌において、治療経過中のM2 Mφの浸潤度や分化についての報告は存在しない。このことから、診断時のMφの状態がその後の経過も規定してしまうのかどうかは明らかになっておらず、治療過程におけるMφの変化が予後に寄与すると仮定するのであれば、 Mφの制御は卵巣癌の治療の柱のひとつとなり得る。 そこで本研究では、抗癌剤による卵巣癌治療がMφの浸潤に及ぼす影響を検討し、予後との関連についての解明を進める。本研究によって、現在注目されている免疫療法の一つとして、卵巣癌治療において、癌細胞をターゲットとしたM2 Mφを制御するという新たな治療戦略の確立を到達目的とする。 現在、当施設で加療を受けた卵巣癌患者の臨床データを収集中し、免疫組織化学染色を行う準備段階である。この課題は2022年度以降も研究継続予定である。
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