研究実績の概要 |
月経困難症、不妊症などで生殖年齢女性の生活の質Quality of Life (QOL)を損ねる子宮内膜症には、有効な治療法が望まれている。しかしながら、子宮内膜症の成因については不明な点が多い。異所性子宮内膜症病変にはリンパ管新生がみられ、リンパ管新生因子発現が増加していることが報告されている。この所見はリンパ管新生が子宮内膜症進展に関与している可能性を示唆する。われわれはこれまで、マウス異所性子宮内膜症モデルを用いて子宮内膜病変においては血管新生が寄与していることと、これを血管内皮増殖因子(Vascular endothelial growth factor, VEGF-A)受容体、VEGFR-1型受容体シグナルが制御している可能性を報告した。そこでVEGFR1受容体シグナルは血管新生だけでなくリンパ管新生を増強し子宮内膜症を進展させることに関与しているのではないかと考えて、その可能性を調べた。野生型マウス(WT)とVEGFR-1受容体チロシンキナーゼ欠損マウスを使用して、異所性子宮内膜症モデルを作成して、子宮内膜症病変の大きさを計測するとともに、内膜病変におけるリンパ管新生について比較検討した。WTに比較してVEGFR-1受容体チロシンキナーゼ欠損マウスで子宮内膜症病変は縮小し、リンパ管密度、リンパ管内皮マーカー、リンパ管新生因子なども減少し、リンパ管新生が抑制された。リンパ管新生因子VEGF-C,VEGF-Dの産生はマクロファージならびに線維芽細胞であった。以上の結果から異所性子宮内膜症の進展にはマクロファージや線維芽細胞がVEGFR1シグナルを介してリンパ管新生因子VEGF-C,VEGF-Dを産生することが重要であることが考えられた。
|