研究課題
卵巣明細胞癌は子宮内膜症との関連が報告されているが、内膜症から明細胞癌が発癌する経路は明らかとはなっていない。その癌化経路を明らかにし、癌化を予防できる薬剤を開発することを目的として研究を開始した。卵巣内膜症性嚢胞の内容液を卵巣表層上皮細胞株(HOSE)に添加したところ、IL24の発現がHOSEにおいて著明に上昇した(P<0.001)。同様に内膜症性嚢胞の内用液をHOSEに添加したところリン酸化STAT3の核内における発現が有意に上昇した(p<0.0001)。STAT3はIL6により活性化することが知られており、その経路にIL24が関与している可能性を考え、リコンビナントのIL24をHOSEに添加してその影響を観察した。その結果IL24をHOSEに添加してもSTAT3のリン酸化は明らかには認められなかった。IL24をHOSEに添加し、IL6の発現に及ぼす影響を検討したところ、IL24によりIL6の発現は変化を認めなかった。また、卵巣癌においてpublic databaseを用いてIL24の発現を検索したところIL24高発現群の予後は良好であった(p=0.018)。IL24のレセプターであるIL20R1とIL20R2に関して卵巣癌における発現を解析したところIL20R1の高発現は予後良好因子であり(p=0.015)、IL20R2の高発現は予後不良因子であった(p=0.0056)。IL24は外因性に添加しても明らかにはIL6-STAT3経路への影響は認めず、内因性のIL24の影響を今後は解析していく。
3: やや遅れている
IL24を外因性に添加しても卵巣表層上皮細胞(HOSE)に明らかなIL6-STAT3経路への影響は確認できなかった。IL24は外因性に加えるとアポトーシスが惹起されることが報告されているが、HOSEにおいてIL24によるアポトーシスも認められなかった。
外因性のIL24は卵巣表層上皮細胞においてSTAT3経路の活性化に関与しなかった。内因性のIL24が重要である可能性を考慮し、HOSE細胞を用いてIL24の強制発現株およびノックダウン株を作成し、機能解析を行っていく。
IL24の強制発現細胞株およびノックダウン細胞株を用いた研究を2019年度に行う予定であったが、研究の遅れにより2019年度中に実施できなかった。そのため、IL24の強制発現細胞株およびノックダウン細胞株を用いた研究を2020年度に行うこととし、未使用額はその経費に充てることとしたい。
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日産婦内視鏡学会
巻: 35-2 ページ: 257-261