研究課題
明細胞癌腫瘍内容液4検体を不死化卵巣表層上皮細胞株(HOSE-1c)培養液中に添加し、添加前後のトランスクリプトーム(SurePrint G3 Human GE マイクロアレイ 8x60K Agilent)を比較したところ、添加48時間後に発現低下が認められた遺伝子はDLX3 Fold change (FC) -28.538, LINC00375 FC -24.526, CHGB FC -19.439, MC4R FC -11.277であった。卵巣内膜症の嚢腫内容液をHOSE-1cに添加した場合IL24の発現を著明に上昇させることを昨年度に示したが、HOSE-1cにDLX3をノックダウンしたところ、2種類のDLX3 siRNAはいずれもIL24の発現を上昇させた。従ってDLX3の発現低下がIL24の発現を上昇させている可能性が考えられた。正常卵巣を用いてDLX3の発現を蛍光免疫染色で確認したところ、正常の卵巣表層上皮においてはDLX3の発現は認められず、間質においてはDLX3の発現が認められた。したがって卵巣表層上皮からの内膜症形成、発癌のメカニズムにおいてはDLX3が寄与している可能性は低いと考えられた。IL24がIL6-STAT3経路を活性化させることが明細胞癌の癌化に寄与している可能性を考え、リコンビナントのIL24をHOSE-1cに添加したところIL6およびSTAT3は変化を認めなかった。
3: やや遅れている
IL24はこれまでの研究結果からは発癌に関与している可能性が得られていない。内膜症内容液添加により著明にIL24発現上昇が認められるが、内因性のSTING経路など免疫応答の結果をみている可能性がある。
IL24は様々な癌においてがん抑制遺伝子として働くことが知られているが、IL24ノックアウトマウスは炎症反応が正常におきないことも報告されている。炎症がおきなければ発がんも抑制できる可能性があり、今後は臨床サンプルをもちいてIL24のレセプターとT細胞浸潤との関係を明細胞癌、子宮内膜症で明らかにしたい。
IL24レセプターとT細胞の臨床検体を用いた免疫染色の予定がずれこんだため、次年度に免疫染色をあわせて行う予定としている。
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埼玉産科婦人科学会雑誌
巻: 50 (2) ページ: 126-130