研究課題
明細胞癌腫瘍内容液4検体を不死化卵巣表層上皮細胞株(HOSE-1c)培養液中に添加し、添加前後のトランスクリプトームを比較したところ、添加48時間後に発現低下が認められた遺伝子はDLX3、LINC00375、CHGB、MC4Rであった。卵巣内膜症の嚢腫内容液をHOSE-1cに添加した場合IL24の発現を著明に上昇させることを示したが、HOSE-1cにDLX3をノックダウンしたところ、2種類のDLX3 siRNAはいずれもIL24の発現を上昇させた。したがってDLX3の発現低下がIL24の発現を上昇させている可能性が考えられた。正常卵巣を用いてDLX3の発現を蛍光免疫染色で確認したところ、正常の卵巣表層上皮においてはDLX3の発現は認められず、間質においてはDLX3の発現が認められた。したがって卵巣表層上皮からの内膜症形成、発癌のメカニズムにおいてはDLX3が寄与している可能性は低いと考えられた。IL24がIL6-STAT3経路を活性化させることが明細胞癌の癌化に寄与している可能性を考え、リコンビナントのIL24をHOSE-1cに添加したところIL6およびSTAT3は変化を認めなかった。IL24はこれまでの研究結果からは発癌に関与している可能性が得られていない。内膜症内容液添加により著明にIL24発現上昇が認められるが、内因性のSTING経路など免疫応答の結果をみている可能性がある。
4: 遅れている
IL24は様々な癌においてがん抑制遺伝子として働くことが知られているが、IL24ノックアウトマウスは炎症反応が正常におきないことも報告されている。内膜症性嚢胞の内容液はIL24を著明に上昇させることが間違いないが、IL24を直接細胞に添加しても明らかな変化を認めず、癌化への影響を明らかにできていない。
臨床検体を用いて子宮内膜症、卵巣癌におけるIL24レセプターと免疫微小環境をマルチプレックス免疫染色で明らかにする。
IL-20R1、IL-20R2、IL-22R1といったIL-24受容体の卵巣癌における発現を2021年度までに解析できなかったため、2022年度に行う。IL-24受容体発現と予後との関係を調べる。
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