TCGA(The Cancer Genome Atlas)より乳がんのSNPアレイデータを入手し、HRDスコアを算出した。既に算出した卵巣漿液性癌(HGSOC)とHRDスコアを比較すると、HGSOCと乳がんではHRDスコアの分布が異なっており、HGSOCでHRDスコアが有意に高いという結果を得た。そこで、HGSOCの遺伝子相同組換え修復(HRR)に関連する遺伝子であるBRCA1/2変異とHRDスコアについてエンリッチメント解析を行ったところ、HRDスコアのカットオフ値を63に設定した場合、カットオフ値以上のHRDスコアを有する症例にBRCA変異が濃縮した。また、HRDスコア63以上の症例は63未満の症例に比べて有意に予後が良好であった。これまで、HRDスコアのカットオフ値は過去の報告から42に設定されていることが多く、このカットオフ値が広く臨床試験などにも用いられてきているが、今回統合的な解析を行うことで、HGSOCにおいては63というカットオフ値が適切である可能性を示した。 次にHGSOCの自験例で、腫瘍サンプリング後に化学療法を行い、化学療法後に手術を行った9症例を抽出し、化学療法前後の腫瘍検体についてOncoScan FFPE Assay Kit(ThermoFisher Scientific)を用いて全ゲノムコピー数解析を行いHRDスコアを算出した。その結果、9例全例で化学療法後にHRDスコアが減少するという結果を得た。
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