研究課題/領域番号 |
19K18714
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研究機関 | 福岡大学 |
研究代表者 |
宮田 康平 福岡大学, 医学部, 講師 (80759233)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 細菌叢 / 早産 / クオラムセンシング |
研究実績の概要 |
早産や陣痛発来のメカニズムへの膣内細菌叢の生化学的な関連を検討しています。特にクオラムセンシングと呼ばれる細菌密度と関連したシグナル伝達機構のオートインデューサー2(AI-2)と呼ばれる広く細菌の生態にかかわっている分子について検討しています。 AI-2は細菌由来の分子であり、蛋白質や核酸と異なり、質量分析などの科学的に高度な手法を用いた濃度測定方法が用いられますが、多数の臨床サンプルを解析するために、より簡易的にかつ正確に測定する方法が必要です。本研究では先行して、腟分泌物中のAI-2を簡易的に測定する手法として、AI-2による細菌の発光を利用した、バイオルミネッセンス法を確立しました。 確立したバイオルミネッセンス法により、250例の妊婦より収集した腟分泌物中のオートインデューサーと呼ばれるシグナル伝達分子の濃度を測定すると、陣痛発来している妊婦の腟分泌物中のAI-2は高値であり、母体の妊娠週数、年齢、産科合併症の有無、結果的な早産の有無、新生児感染症の有無、治療反応性には統計学な相関はありませんでした。しかし、基礎疾患、合併症によらず、子宮収縮の頻度とAI-2は有意差をもって関連していることが分かりました。このことからクオラムセンシングは子宮収縮や陣痛発来のメカニズムを担っている可能性が示唆されました。 現在、平滑筋細胞での筋収縮実験に着手しており、今後はAI-2による子宮筋収縮の分子メカニズムを明らかにしていきます。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
前年度までのデータ解析により、子宮収縮とクオラムセンシングについての関連は十分に証明できた。
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今後の研究の推進方策 |
クオラムセンシングが活性化している症例の腟分泌物中の細菌叢解析により、クオラムセンシングに寄与している細菌種の同定を行う。また、クオラムセンシングと子宮収縮の関連についてin vitroでの証明を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
COVID-19対応のため、研究計画の遂行が簡潔に行われるようになったこと、予定していた実験が事実の証明のために不要となったことから、予定していた予算を動物実験などの他の実験に回すこととなったため。
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