好酸球性副鼻腔炎では鼻副鼻腔粘膜におけるタイトジャンクションの形成低下およびバリア機能低下が発症メカニズムにおいて重要である。IL-12のバリア機能への影響を確認するため、鼻腔粘膜上皮細胞の気相―液相培養(以下ALI培養)を行い、リコンビナントIL-12投与の有無による経上皮電気抵抗(以下TEER)を測定しバリア機能を評価した。好酸球性副鼻腔炎および非好酸球副鼻腔炎いずれの群においても、IL-12投与群と非投与群でTEERの有意な差を認めなかった。またALI培養においてタイトジャンクションを構成するタンパク質であるZO-1について免疫蛍光染色法で評価したが、それぞれの群において発現に有意差を認めなかった。これらの結果からは、IL-12は鼻腔粘膜上皮細胞ではなく粘膜下組織において作用している可能性が考えられた。 また鼻腔粘膜においてpoly(I:C)刺激によりIL-12のm RNAの発現量が低下することを明らかにした。poly(I:C)は自然免疫シグナルを活性化すること、慢性副鼻腔炎においてはIL-12が低下していることから、自然免疫の活性化が好球性副鼻腔炎発症のメカニズムに関与している可能性が示唆された。 上記の実験で用いたpoly(I:C)はToll様受容体3のアゴニストであり、ウィルス感染モデルとして頻用されることから、ウィルス受容体の発現変化について評価したところ、新型コロナウィルスの結合受容体であるACE2のmRNAおよびタンパク質の有意な発現亢進を認めた。またこの発現の亢進は副腎皮質ステロイドであるフルチカゾンプロピオン酸エステルにより有意に抑制された。これらの結果からは、in vivoでの検討が必要なものの、副腎皮質ステロイドがウィルス感染後のACE2発現亢進を抑制することで重症化や感染予防に効果をもつ可能性が示唆された。
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