最終年度の研究としては、動物モデルおよび好酸球性中耳炎患者から採取した肉芽組織を用いて組織中のマクロファージの探索を行った。また好酸球性中耳炎患者の内耳性難聴とマクロファージの発現の関連を調べた。 近年、好酸球性炎症の難治化にマクロファージが関与している可能性が示唆されている。マクロファージは組織中でM1とM2の二つの極性を持つものが存在しており、M1マクロファージは主に細菌感染などで観察され、M2マクロファージはアレルギー反応と関連していると考えられている。今回は一般的なマクロファージのマーカーであるCD68とM2マクロファージのマーカーとして知られるCCL18の免疫染色を行った。興味深いことにCCL18が陽性となる患者において骨導聴力の低下を認めた。本研究結果は第1回日本耳鼻咽喉科免疫アレルギー感染症学会にて発表し、今後データを整理して論文として投稿する予定である。 本研究期間全体を通して、主に動物モデルを用いて好酸球性中耳炎の病態および続発する内耳性難聴の病態について研究を続けてきた。上皮性サイトカインであるTSLPを介して樹状細胞が刺激されるという自然免疫系の反応がモデル動物でも起こっていることを示唆する結果が得られ、論文投稿を行った。同研究において、耳管周囲の上皮と好酸球性中耳炎発症が関係していることを示すデータもある。内耳性難聴が引き起こされる背景にはM2マクロファージの存在があることも示唆されているため、今後は耳管周囲での炎症の状態、また動物モデルにおけるマクロファージの探索を行っていきたいという、次なる研究の方向性を得ることができた。
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