研究実績の概要 |
【目的】本研究では、中咽頭癌治療体系において遺伝子メチル化解析技術を活用し、放射線治療の効果予測マーカーを樹立することを目的とした結果、昨年度まで精度の高いマーカーパネルの樹立に成功したため、今年度はその応用の可能性と効果予測メカニズムに迫ることを目的とした 【方法】根治的放射線治療を受ける前の中咽頭癌生検検体(n = 75)の遺伝子メチル化解析により樹立した治療効果予測マーカー遺伝子についてsiRNAを用いて遺伝子knockdownを行い、複数の咽頭癌細胞株における増殖能、浸潤能及び放射線への感受性の変化を観察した。また、マーカーパネルによる層別化が治療効果予測だけなく全生存期間及び無増悪生存期間に及ぼす影響を評価した。 【結果・考察】 75例の中咽頭癌症例に対し、マーカーパネルによる層別化を行ったところメチル化陽性群において、メチル化陰性群と比較して(HR[95%CI])有意に無増悪生存期間(0.08[0.04-0.19], p<0.001)及び全生存期間(0.1[0.03-0.37], p<0.01)の延長が認められた。当該結果から、本マーカーパネルが放射線を含む治療の効果予測のみならず、治療による再発リスクや生存期間についても治療の結果予後良好となる症例群の予測にもなりうることが示唆され臨床的な有用性が期待される結果と考えられた。 また、咽頭癌細胞株を用いた機能解析の結果、マーカー遺伝子の一部において発現抑制により細胞増殖能が抑制されることが明らかになった。 【結論】本研究で樹立されたマーカーパネルの高い効果予測能が検証され、今後さらなる検討により、臨床への応用が期待される。
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