研究課題
切除後の迅速病理で断端に癌の残存を認めないにもかかわらず局所再発する、すなわち、顕微鏡的に確認できない癌や異形成の存在が疑われ、分子生物学的手法による切除断端、深部断端の癌残存有無の評価が必要である。本申請は口腔癌切除後の深部断端における残存癌組織の有無を病理学的手法のみに頼らず、『メンブレンパッチ法』によるDNA採取、術前の組織生検(tissue biopsy)、採血からのDNAメチル化解析を併せ、より精度の高い診断法の確立と術中短時間DNAメチル化解析の実現を目標とし、“手術室からベンチそして手術室へ”とつなぐ「臨床へのリアルタイムな還元」を目指した斬新な研究である。2019年度は、メンブレンパッチ法による舌癌症例のDNA採取を3症例に行った。舌癌症例の摘出組織の癌側、正常側にメンブレンを押し当て、メンブレンに付着した細胞をPBS液につけて、振盪したのち遠心し細胞を回収した。DNA量は、腫瘍側が平均1.91ug/ml、正常側が平均1.19ug/mlであった。このDNA量は、エピジェネティクス解析に十分量であることを確認している。2020年度は、メンブレンパッチ法に改良してサイトブラシ法を導入した。中咽頭癌、舌癌症例のDNA採取を8症例に行った。メンブレンパッチ法と変わらないDNA収量を得ることができた。2021年度は、このDNAをバイサルファイト処理し、 E-cadherin, GALR1, TAC1, COL1A2 のメチル化の状態を Quantitative methylation-specific PCR (Q-MSP法) にて評価する予定である。最終的には、術中病理検査と同様の時間内でメンブレンパッチ法による迅速分子生物学的解析の実現を目指していく。
2: おおむね順調に進展している
2019年度メンブレンパッチ法による舌癌症例のDNA採取を3症例に行った。癌側、正常側ともに、この方法でのDNA回収量は今後のエピジェネティクス解析に十分な量であることが分かった。2020年度は、メンブレンパッチ法に改良してサイトブラシ法を導入した。中咽頭癌、舌癌症例のDNA採取を8症例に行った。メンブレンパッチ法と変わらないDNA収量を得ることができた。
2021年度は、メンブレンパッチ法による舌癌症例のDNAを使って、E-cadherin, GALR1, TAC1, COL1A2 のメチル化の状態を Quantitative methylationspecific PCR (Q-MSP法) にて評価する予定である。
2019年度は、メンブレンパッチ法によるDNA回収の実験が主であった。2020年度は、サイトブラシ法を導入した。2021年度は、エピジェネティック解析を始めるため、PCR酵素など予算使用額が増加すると予想される。
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耳鼻咽喉科臨床 補刷
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