研究実績の概要 |
高知大学医学部附属病院の入院診療録より、認知症と嚥下障害および誤嚥性肺炎との関連について調査した。2007年1月から2019年3月までの入院診療録119,595件(実患者数57,319人)より85,052件(47,297人)の診療録を抽出した。アルツハイマー型認知症、レビー小体型認知症、など、認知機能低下に関連する病名が登録されていた(以下、dementiaあり)のは425件(0.5%)であった。入院中に嚥下障害の病名が登録されていたのは987件(入院患者の1.2%)あり、うちdementiaありは17件(1.72%)であった。誤嚥性肺炎の病名が登録されていたのは309件(入院患者の0.4%)あり、うちdementiaありは10件(3.24%)であった。 嚥下障害あるいは誤嚥性肺炎の病名が登録されていたdementiaありの計27人につき、認知症の詳細病名や入院中の耳鼻咽喉科介入および嚥下機能評価の実施について調査した。 病名はアルツハイマー型認知症が9人、レビー小体型認知症が2人、認知機能低下が15人、老年期認知症が1人であった。入院中に耳鼻咽喉科を受診していた患者は7人(25.9%)であり、うちアルツハイマー型認知症は2人、レビー小体型認知症は1人、認知機能低下は4人であった。耳鼻咽喉科を受診した患者は全例嚥下内視鏡検査を受けていた。嚥下内視鏡検査はスコア評価(日耳鼻 113:670-678,2010)が行われており、スコアの合計は5.29±2.06点であった。スコアの内訳をみると、唾液貯留のスコアは1.29±0.76、咳・声門反射惹起性のスコアは1.43±0.53、嚥下反射惹起性のスコアは1.29±0.76、嚥下後の咽頭クリアランスのスコアは1.29±0.76であり、全ての症例の各スコアにおいて、最も悪いスコアである3点と評価された項目はなかった。
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