研究課題/領域番号 |
19K18734
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
吉田 崇正 九州大学, 医学研究院, 共同研究員 (50600912)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 蝸牛 / 聴覚 / 電気生理 / ラセン靱帯 |
研究実績の概要 |
内耳蝸牛の内リンパ液高電位(EP)とK循環は聴覚に必須の特性で、蝸牛側壁のイオン輸送に立脚し、その破綻は難聴を惹起する。蝸牛側壁のラセン靱帯の細胞成分である線維細胞(SLF)は、in vivoにおいてNa依存性の正の静止膜電位(約+10 mV)を持ち、これがEPの成立に不可欠である。SLFには正の膜電位を生み出すNaチャネルがあると想定され、難聴の病態に関与している可能性がある。その分子同定のための電気生理実験が本研究のテーマである。 研究初年度には、ラットのラセン靱帯のスライスパッチクランプ実験を行い、SLFのホールセル記録に成功した。しかし長時間の酵素処理による細胞障害が強く、実験の成功率・安定性が非常に低い、記録細胞のサブタイプ同定のための免染反応が失われる、という問題を克服できなかった。そこで、酵素処理を要しない新たなin vitro実験系を立ち上げた。急速単離したラセン靱帯組織にパッチクランプよりも細い微小電極を挿入して細胞内記録を行った。実測されたSLFの静止膜電位は、in vivoで記録されるよりも大きな正電位(+20~30 mV)で、そのイオン感受性はNa選択的だった。この結果は、SLFのNaチャネルという仮説に合致する。細胞内記録法は、パッチクランプのように細胞内環境をコントロールしたり膜電流を実測したりすることは困難だが、蝸牛単離後10分余りで測定を開始できる。24時間以上の高濃度の酵素処理を要するスライスパッチクランプと比べて成功率・再現性が大きく改善し、膜電位のイオン・薬物感受性に関するデータが得られた。 第2年度(当該年度)は、新型コロナウイルスの流行のため、試薬や実験動物の入手など実験環境に不確定要素多く、安定した実験条件の確立が困難と判断し、実験を中止したため新たな知見は得られていない。国内学会に置いて、研究の中間報告を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
新型コロナウイルスの流行のため、試薬や実験動物の入手など実験環境に不確定要素多く、安定した実験条件の確立が困難と判断し、第2年度は計画していたin vivo・in vitro実験を中止した。研究期間を1年間延長し、第3年度に再開・継続する予定である。
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今後の研究の推進方策 |
in vitro細胞内記録の系に分子生物学的手法を組み合わせ、Naチャネルの分子同定を目指して実験を再開する。また、EP測定などのin vivo実験により、in vitroのデータとの整合性を検証する。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルスの流行のため、実験環境の安定的な維持が困難と判断し、第2年度に計画していた実験を中止した。研究期間を1年間延長して、予定していたin vivo・in vitro実験を第3年度に遂行する予定である。
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