腫瘍や甲状腺腫瘍の手術において顔面神経が切断された場合、顔面運動や声帯が麻痺する。これらの神経損傷において、神経を即時再建しなければ筋は急速に萎縮するのに対し、即時再建すると筋萎縮は抑制される。これらの相違は末梢神経障害のCentralDogmaであるWaller変性の概念では説明することはできない臨床上の謎である。本研究課題では神経即時再建により、筋は動かないが萎縮を抑制する未知のシグナルや因子が存在するかを探求するのが目的であり、神経や筋における遺伝子発現を解析することで、末梢神経の変性と再生における新たなメカニズムを解明し末梢神経障害の治療に応用することである。本研究では、顔面神 経を切断した後、即時神経再建する動物モデルと神経再建しない動物モデルを作成し、神経-筋接合部を形態学的に観察するとともに神経や筋に発現する遺伝子を網羅的に解析する。そして、両モデル動物の神経・筋における形態や遺伝子発現を比較ることで、神経再生・変性に関する新たなシグナルや因子を検索し、その分子学的機構を解明する。 2019年度はラット表情筋と神経本幹を採取後免疫染色を行い神経即時再建群と切断群での表情筋や末梢神経の変化の観察を行った。結果神経即時再建群にてそれらの形態の一部において優位に変性が抑制されることが分かった。2020年度以降はラットの表情筋を再建群、切断群、偽手術群のラットの表情筋を採取しマイクロアレイにて網羅的遺伝子解析を行った。パスウェイ解析を行い一部で有意な結果を得られた。
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