本年度はVEGFR阻害剤・レンバチニブ(E7080)とマイトジェン活性化プロテインキナーゼ(MEK)阻害剤の組み合わせが甲状腺未分化癌治療に有用かどうかを実験した。レンバチニブは、放射性ヨウ素不応性甲状腺がん患者の生存率を改善することが示されているVEGFR阻害作用をもつ経口チロシンキナーゼ阻害剤である。昨年までのVEGFR阻害の作用機序解析を元に、治療効果向上と副作用軽減のために、レンバチニブとMEK阻害剤の組み合わせを提案した。この仮説を実証するために、2つのヒト未分化甲状腺癌(ATC)細胞株8505CとTCO1を使用して、MEK阻害剤U0126とレンバチニブの効果をin vitroでテストし、別のMEK阻害剤であるセルメチニブ(AZD6244)をATCマウスモデルで検証した。レンバチニブとMEK阻害剤の併用により、invitroおよびinvivoのいずれかの薬剤による単剤療法の抗腫瘍効果が増強されることがわかった。これらの効果は、AKT(プロテインキナーゼB)および細胞外シグナル調節キナーゼ(ERK)シグナル伝達経路を介している可能性が考えられる。さらに、この組み合わせは、体重、血液生化学的パラメーター、および組織病理学の観点から、ATCマウスモデルに重大な有害事象は認めなかった。また、VEGFR阻害による腫瘍分化とEMTシグナルへの影響を近く論文投稿を予定している。
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