本研究では、同一の患者の炎症局所から単離した組織好酸球と末梢血好酸球を用いて、CD69分子の機能的役割の解明と活性化制御に向けた新たな分子標的薬の開 発につながるマイルストーンになる研究となることを目的としている。これまで、ヒト副鼻腔組織より適切に好酸球を単離する方法がなかったため、活性化した 組織好酸球を解析した報告は全くおこなわれていなかったが、令和2年度では、好酸球性副鼻腔炎患者からの手術標本のサンプルからの高純度で好酸球を単離する方 法を確立した。実際には、鼻茸組織と末梢血から比重分離法とフローサイトメーター、セルソーターを用いて好酸球を多量かつ高純度に単離した。単離した好酸 球の細胞膜に発現する活性化マーカーの1種であるCD69の発現を組織好酸球と末梢血好酸球にて評価をおこなった。結果、組織好酸球においてCD69の発現が増強 しており、末梢血好酸球と比べて活性化していることがわかった。さらに、CD69は活性化マーカーとしてだけではなく分子機能的役割も他の血球系細胞にて報告 されている。しかし、好酸球においてはCD69の機能的役割は未だ不明であり、特異的なリガンドも同定されていない。そのため、クロスリンキング法を用いて好 酸球に発現するCD69を刺激する動物実験をおこなった。結果、CD69を刺激するとマウス好酸球において好酸球特異的タンパクの一種であるeosinophilic peroxidaseの脱顆粒を誘導することがわかった。 好酸球の形態学的な精査を令和2年度に施行した。具体的にはフローサイトメーターを用いて好酸球の密度と大きさの変化を末梢血と組織中で比較をおこなった。また、免疫組織学的検査を行い、組織中の活性化好酸球の局在を解析した。 その結果、組織に移行し活性化した好酸球は密度が低下し大きさも縮小した。 このことより活性化した好酸球は脱顆粒していることが確認できた。
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