閉塞性睡眠時無呼吸は睡眠時上気道狭窄によって肺への吸気流入が不良となることで間欠的に低酸素状態となって身体に負荷がかかり、二次的に冠動脈疾患や心筋梗塞、心不全などの心血管疾患や糖代謝異常を増悪する疾患である。気道の物理的な狭窄や閉塞を解除する目的で持続的陽圧呼吸装置や気道改善手術、舌下神経刺激装置などが試みられているが、実臨床においては極度の肥満や改善しきれない上気道狭窄がある場合などで治療後も改善不良となることがある。 睡眠時無呼吸は間欠的低酸素を意味するが、この病態によって低酸素誘導因子であるHIFが産生される。これを中間産物とし、その下流には炎症の中心的役割をする転写因子であるNFκBや、血管新生に関与する血管新生因子であるVEGF、組織障害に関与する活性酸素などが産生される事が知られている。実際、睡眠時無呼吸患者の血中ではコントロールと比べて炎症性サイトカインが多く産生されていることが報告されている。また、がん領域での治療では抗HIFに着目したmTOR阻害の治療が血管新生を抑制するために用いられている。これらのことから、抗HIFが間欠的低酸素によって生じる病態を改善する治療薬となりうると考えられるが、それを証明した報告はまだない。そこで、これを実証するため、再現性のとれる動物モデルで間歇的低酸素を誘導し、睡眠時無呼吸によって生じる二次疾患を誘導する病態を改善出来るかについて検討した。
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