研究課題/領域番号 |
19K18762
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研究機関 | 東京医科歯科大学 |
研究代表者 |
河邊 浩明 東京医科歯科大学, 医学部附属病院, 医員 (40826088)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 下咽頭癌 / 早期診断 / liquid biopsy |
研究実績の概要 |
頭頸部癌は世界で6番目に多い悪性腫瘍であり、その中で下咽頭癌は2割弱占める。下咽頭癌の進行癌では咽喉頭摘出術による失声、放射線化学療法による副 作用などの治療の困難さがあり、5年生存率も50%程度で予後不良である。反対に下咽頭癌早期癌の場合、内視鏡切除が可能で、5年生存率も95%程度と予 後良好である。下咽頭癌は早期か進行かでQOLと予後が全く異なっており、いかにして早期発見するかが課題となっている。 下咽頭腔は平常時はほぼ閉じており、常時粘液が貯留している。内視鏡観察が難しく、症状も出にくいため、下咽頭癌の早期発見は困難である。患者は咽喉頭 異物感を主訴に耳鼻咽喉科外来を受診するが喉頭内視鏡検査では見落とされる事も多い。この時点で全例に対して入念な上部消化管内視鏡検査を行えればよい が、同症状の患者は多く存在するため医療経済的な観点から現実的ではない。そこで耳鼻咽喉科外来の段階で使用可能な早期下咽頭癌スクリーニングのツールが 必要と考えられる。 最近口腔癌で唾液によるLiquid Biopsyが研究されている。唾液中の循環腫瘍細胞(CTCs)、循環腫瘍DNA(ctDNA)、エクソソームmiRNA、タンパク質などの研究が 進んでおり、すでに実用化されているものもある。今回の研究では下咽頭でも同様に精査可能か検討するための研究である。まずは下咽頭癌と診断された患者に対して、唾液採取、手術時にがん細胞と正常な細胞を採取し、がん細胞特有のDNA変異について精査する。変異を確認できた場合、うがい液や痰を採取し、同じDNA変異が認めるか確認する。うがいの方法や唾液で検出可能か検討し、より簡易な採取方法を模索する。この研究により簡易な検査で下咽頭癌の早期診断が可能になれば、医療費削減だけでなく、患者の利益、しいては公益に資 する可能性がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
手術した下咽頭患者に対して、がん細胞と正常細胞を採取し、TP53の遺伝子異常を比較したが、検体採取できたのは2人のみである。その原因としてCOVID-19の影響で癌患者の受診が減少していると考える。また現在ICUが使用不可で、下咽頭癌再建手術ができない状況である。そのため研究がやや遅れていると判断する。
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今後の研究の推進方策 |
手術した下咽頭患者2人に対して、がん細胞と正常細胞を採取し、TP53の遺伝子異常を比較した。1人はTP53遺伝子に異常を認めなかったが、もう1人はTP53のexon8にSNPを認めた。今後唾液やうがい液で同じ異常を認めるか、精査予定である。 手術が可能になれば、下咽頭癌患者を関連病院からリクルートする。
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次年度使用額が生じた理由 |
COVID-19の影響で研究がやや遅れていたため。
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