下咽頭癌および食道癌症例におけるアルコール分解酵素であるADH1B遺伝子およびALDH2遺伝子の遺伝子多型の関与を検討する研究である。 その研究を行うにあたり、まず、実際の患者の飲酒の実態を把握する目的で、当院で過去10年間に経験した下咽頭癌および食道癌症例の飲酒量(Sake Index: 日本酒換算の1日飲酒合数×飲酒年数)を、カルテ記載より抽出した。その結果、下咽頭癌(106例)では平均78.6、食道癌(165例)では65.9といずれも高値であった。対照として鼻副鼻腔癌(26例)、唾液腺癌(31例)についてみてみると、それぞれ22.7および10.8であり、下咽頭癌および食道癌と有意な差を認めた。 次に、新規の下咽頭癌患者に対して食道癌のリスク評価のための問診票(横山 顕、2013)を用いて飲酒・喫煙習慣を点数化することを進めている。また、鼻副鼻腔癌や口腔癌、唾液腺癌など、他の頭頸部癌患者の結果との比較も進めている。 ADH1B遺伝子およびALDH2遺伝子の遺伝子多型の解析については、本学医学部遺伝子機能解析学の麻生悌二郎教授の指導を受け、解析のための検体処理方法や手技の習得などの準備を進めている。
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