内視鏡下鼻副鼻腔手術の適応は広がり前頭洞単洞化手術・頭蓋底手術が行われている。これらの手術で鼻粘膜を温存できず広範囲に骨が露出した部位に骨増生が生じる場合がある。特に前頭洞の排出路が骨増生により閉鎖することで、副鼻腔炎症状の再燃が生じる。露出した骨面に鼻粘膜上皮を速やかに再生させることで骨増生を抑え、副鼻腔炎症状の再燃を予防することができると考えた。鼻腔粘膜上皮細胞シートを用いた副鼻腔疾患の再生治療の前臨床研究として、家兎の病態モデルおよび治療モデルを作成し、その効果を解明することを目的とする。 鼻粘膜再生治療の前臨床研究として、鼻粘膜除去をして骨過形成を起こす家兎の病態モデルおよび培養鼻腔粘膜上皮細胞シート治療モデルを作製した。培養鼻腔粘膜上皮細胞シートによる治療では鼻粘膜上皮の早期再生はせず骨過形成を防ぐことはできなかった。細胞シートの細胞ソースを脂肪由来間葉系細胞(adipose-derived mesenchymal stromal cell: ADSC)に変更し治療モデルを作製した。ADSCシートによる治療は骨過形成を抑制する傾向を認め、鼻粘膜再生に寄与したと考える。これは家兎鼻内の残存している鼻粘膜上皮がADSCを足場として遊走し、早期の鼻粘膜の再生が行われたためと考えている。そこでADSCシートを移植した上に鼻粘膜上皮細胞シートを移植することにより、より早期の鼻粘膜の再生が可能になると考えた。ADSCシートと鼻腔粘膜上皮細胞シートの同時移植治療モデルを作製したところ、症例数は少ないものの骨増生の抑制を認めた。ADSCシート単独移植モデルに比べて早期の鼻粘膜再生が起こっていると考えられる。今後も鼻粘膜再生の細胞治療を検討していく
|