研究実績の概要 |
本研究では、中耳真珠腫の臨床検体を用いてエピジェネティックな変化が遺伝子レベルでどのように影響するかを解明することで、発症機序の解明をめざし、ヒストン蛋白質修飾やDNAのメチル化を制御する因子を抽出し、縮小手術を行う目的で内視鏡下耳科手術と新規保存的治療のコンバインド療法の開発を検討する。そのために、臨床では内視鏡下耳科手術の技術向上に努め臨床分野での研究も行いながら、以下の通り実験を進めている。 ・組織採取:真珠腫性中耳炎症例、非真珠腫性慢性中耳炎症例に対し手術療法を受ける症例のうち、同意を得られた患者から手術中に組織を採取する。また同患者から正常コントロールとして皮膚切開部の皮膚を一部採取している。院内倫理委員会の承認を受けており(受付番号27-344(8229))、現在のところ200例程度採取し、100例ほどのRNA抽出を行った。 ・動物実験:当初、対象動物は乳突部の蜂巣構造がヒトと類似しているブタを用いることを考えていたが、真珠腫モデルラットを用いた検討(ヒストン蛋白アセチル化修飾が中耳真珠腫病態の一端を担っており、特にヒストンH3K27のアセチル化レベルの上昇がKGFRの発現に相関(福田智美, BIO Clinica 2016))が申請者の所属講座の福田智美講師より報告されており、ラットを用いるが望ましいと考えている。具体的には、当教室からすでに報告されている実験的真珠腫作成方法(Yamamoto-Fukuda, Eur Arch Otorhinolaryngol 2015)を用い、内視鏡下にDNAメチル化酵素(DNMT)阻害剤、ヒストン脱アセチル化酵素(HDAC)阻害剤を投与し効果判定を行う。現在は動物実験実施のための講習会受講などの準備およびKGFベクター、EGFベクター作成を行っている。
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