中耳真珠腫におけるエピジェネティクス制御機構の解明

2020 年度 実施状況報告書

• 研究課題/領域番号: 19K18786
• 研究機関: 東京慈恵会医科大学
• 研究代表者: 高橋 昌寛 東京慈恵会医科大学, 医学部, 助教 (50581691)
• 研究期間 (年度): 2019-04-01 – 2022-03-31
• キーワード: 中耳真珠腫 / エピジェネティクス / 内視鏡下耳科手術

研究実績の概要

本研究では、中耳真珠腫の臨床検体を用いてエピジェネティックな変化が遺伝子レベルでどのように影響するかを解明することで、発症機序の解明をめざし、 ヒストン蛋白質修飾やDNAのメチル化を制御する因子を抽出し、縮小手術を行う目的で内視鏡下耳科手術と新規保存的治療のコンバインド療法の開発を検討す る。そのために、臨床では内視鏡下耳科手術の技術向上に努め臨床分野での研究も行いながら、以下の通り実験を進めている。 ・組織採取:真珠腫性中耳炎症例、非真珠腫性慢性中耳炎症例に対し手術療法を受ける症例のうち、同意を得られた患者から手術中に組織を採取する。また同患 者から正常コントロールとして皮膚切開部の皮膚を一部採取している。院内倫理委員会の承認を受けており(受付番号27-344(8229))、現在のところ200例程度採 取し、100例ほどのRNA抽出を行った。 ・動物実験:当初、対象動物は乳突部の蜂巣構造がヒトと類似しているブタを用いることを考えていたが、真珠腫モデルラットを用いた検討(ヒストン蛋白アセ チル化修飾が中耳真珠腫病態の一端を担っており、特にヒストンH3K27のアセチル化レベルの上昇がKGFRの発現に相関(福田智美, BIO Clinica 2016))が申請者の 所属講座の福田智美講師より報告されており、ラットを用いるが望ましいと考えている。具体的には、当教室からすでに報告されている実験的真珠腫作成方法 (Yamamoto-Fukuda, Eur Arch Otorhinolaryngol 2015)を用い、内視鏡下にDNAメチル化酵素(DNMT)阻害剤、ヒストン脱アセチル化酵素(HDAC)阻害剤を投与し効果 判定を行う。現在は動物実験実施のための準備およびKGFベクター、EGFベクター作成を継続的に行っている。内視鏡下手術に関しては臨床経験および臨床データを用いて学会報告、論文作成を着実に進めている。

現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

新型コロナウイルス蔓延のため、我々耳鼻咽喉科医が解剖学実験室に立ち入りが制限されたためやや遅れている部分があるが研究は進行している。

今後の研究の推進方策

昨年度同様に進めていく。特に論文執筆に力を入れる。

次年度使用額が生じた理由

研究使用薬剤、備品などの経費に用いる。

研究成果

• [雑誌論文] Non-echoplanar diffusion weighed imaging and T1-weighted imaging for cholesteatoma mastoid extension (2021)
  • 著者名/発表者名: Baba A, Kurihara S, Fukuda T, Yamauchi H, Matsushima S, Ikeda K, Kurokawa R, Ota Y, Takahashi M, Sakurai Y, Motegi M, Komori M, Yamamoto K, Yamamoto Y, Kojima H, Ojiri H.
  • 雑誌名: Auris Nasus Larynx . 巻: Online ahead of print. ページ: (21)00029-8.
  • DOI: 10.1016/j.anl.2021.01.010.
  • 査読あり / オープンアクセス
• [雑誌論文] The relationships among mastoid air cell development, tympanic sinus depth, and residual disease after surgery in children with congenital cholesteatoma. (2020)
  • 著者名/発表者名: Takahashi M, Yamamoto Y, Koizumi H, Motegi M, Komori M, Yamamoto K, Yaguchi Y, Kojima H.
  • 雑誌名: Acta Otolaryngol. 巻: 140 ページ: 286-288
  • DOI: 10.1080/00016489.2020.1712475.
  • 査読あり / オープンアクセス
• [雑誌論文] The impact of middle ear aeration on surgical outcome after intact canal wall tympanoplasty for cholesteatoma (2020)
  • 著者名/発表者名: Motegi M, Yamamoto Y, Ouchi K, Akutsu T, Tada T, Kurihara S, Takahashi M, Sampei S, Sano H, Morino T, Komori M, Yamamoto K, Sakurai Y, Kojima H.
  • 雑誌名: Auris Nasus Larynx. 巻: 47 ページ: 965-975
  • DOI: 10.1016/j.anl.2020.06.006.
  • 査読あり / オープンアクセス
• [雑誌論文] Preoperative predictive criteria for mastoid extension in pars flaccida cholesteatoma in assessments using temporal bone high-resolution computed tomography (2020)
  • 著者名/発表者名: Baba A, Kurihara S, Ogihara A, Matsushima S, Yamauchi H, Ikeda K, Kurokawa R, Ota Y, Takahashi M, Sakurai Y, Motegi M, Komori M, Yamamoto K, Yamamoto Y, Kojima H, Ojiri H.
  • 雑誌名: Auris Nasus Larynx. 巻: Online ahead of print. ページ: (20)30315-1.
  • DOI: 10.1016/j.anl.2020.11.014.
  • 査読あり / オープンアクセス
• [学会発表] 経外耳道的内視鏡下耳科手術における70度内視鏡使用ー骨削開範囲の定量的検討 (2020)
  • 著者名/発表者名: 高橋昌寛 栗原 渉 森野常太郎 茂木雅臣 山本和央 櫻井結華 山本 裕 小島博己
  • 学会等名: 第30回日本耳科学会