本年は、これまでの研究を踏まえ、実際に慢性化膿性中耳炎の患者を対象に、機械学習により術前に術後の成績を予測できるか、また予測できるのであればその精度はどの程度かを明らかにすることを目的に研究を行なった。 具体的には、当院で慢性化膿性中耳炎で鼓室形成術を受けた114耳を対象に、術後成績を予測するモデルを作成した。予測モデルは、機械学習モデルと、古典的スコアリングモデルを用いた。予測課題としては、術後の気骨導差が15dB以下か以上かを予測する2クラス分類と、術後の気骨導差を10dB刻みで予測する多クラス分類(10dBごと)の課題を設定した。評価項目としては、モデルの予測精度を用い、これを比較した。古典的モデルでは2クラス分類で72.8%、多クラス分類で29.8%であった。一方、機械学習モデルでは2クラス分類で78.9%、多クラス分類で73.7%であった。これにより、機械学習モデルを用いることで、慢性化膿性中耳炎に対する鼓室形成術の手術成績を、一定の確度を持って術前に予測することが可能であることが示された。 また、機械学習モデルを解析することにより、予後因子として術前気骨導差、年齢、軟部組織陰影が挙げられ、この順に影響力が強いことも明らかとなった。 以上の研究から、これまで困難であった、耳科手術の術後成績を術前に予測することが可能であることが新たに示され、手術を検討している患者に対し、意思決定に寄与する重要な情報を提供することが可能となった。
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