頭頸部扁平上皮癌に対する治療にはシスプラチン(CDDP)が用いられているが、新たな治療法が望まれている。本研究課題ではCDDP化学療法が腫瘍免疫応答に及ぼす影響を基にしたCDDP化学療法と癌免疫療法の新規併用療法の開発を目指した。 活性化リンパ球へのCDDPの直接的な影響を評価するため、in vitroにてCDDP存在下でヒトリンパ球を抗CD3抗体にて刺激した。その結果、分裂細胞のCDDP濃度依存的な減少が認められた。in vivoでの影響を評価するため、マウス扁平上皮癌細胞株を移植したマウスにCDDPを投与した。その結果、コントロール群に比べて所属リンパ節中のT細胞数が減少したものの、樹状細胞及びCD8+T細胞における活性化細胞の割合が増加した。CDDP化学療法後の癌免疫療法導入の妥当性を評価するため、健常人およびCDDPを用いた化学療法前後の頭頸部扁平上皮癌患者から末梢血単核球を採取し、抗CD3抗体にて刺激した。その結果、化学療法後の末梢血単核細胞数の減少が認められる時期であっても、T細胞の反応性に影響は認められなかった。 そこで、扁平上皮癌マウスモデルを用いてCDDPとSTING活性化療法の併用療法の効果を評価した。その結果、それぞれの単用療法に比べて併用療法がより高い腫瘍増殖抑制効果を示した。STING活性化療法により、所属リンパ節中のマクロファージ及びCD8+T細胞の数が増加した。また、腫瘍組織中のM1様マクロファージの割合が増加し、骨髄由来免疫抑制細胞の割合が低下した。さらに、腫瘍組織におけるケモカイン遺伝子の発現も増加した。そのため、ケモカインレセプターであるCXCR3を抗体で阻害した結果、併用療法における腫瘍抑制効果が減弱された。 本研究結果は、以後のCDDPと癌免疫療法の併用方法を開発する際の一助になり、扁平上皮癌患者の予後改善に貢献することが期待できる。
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