本研究では、ヒトiPS細胞から神経堤細胞(NCC)を介して間葉系幹細胞(MSC)へと分化させたものを、免疫不全ラットの甲状軟骨に移植し、その生着の有無や軟骨再生効果を検証することを目的としている。 昨年度までに、京都大学iPS細胞研究所、池谷真研究室で開発されたゼノフリーでのNCCを介する分化誘導プロトコールを用い、ヒトiPS細胞からMSCへの分化誘導後、spheroidを形成し、NBRP-Rat分担機関である東京大学医科学研究所実験動物研究施設の真下知二先生より御供与頂いたX-SCIDラットの甲状軟骨の軟骨欠損部への移植実験を行った。移植後、一カ月後と二か月後に甲状軟骨を採取し、移植部にHE染色で正常軟骨に特徴的な小腔形成を示す軟骨様組織を認めることを確認した。更に、免疫組織化学で抗ヒト核抗体陽性細胞(移植細胞の生存)を認め、アルシャンブルー染色およびSafranin O染色、II型コラーゲン抗体を用いた免疫組織化学で同部位に再生硝子軟骨組織を認めることも確認した。 MSCは免疫系を惹起しないとの報告がある為、今年度はX-SCID ラットよりも免疫系の機能が保たれているヌードラットで同様の移植実験を行った。前年度までに安定した分化誘導および手術手技が確立されており、条件検討は不要であるため、研究計画も遅れることなく実現する事ができた。現時点で、組織採取まで終了しており、今後生着や、軟骨再生効果、腫瘍形成の有無などを免疫組織化学などで確認する予定である。
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